猪瀬氏辞任の陰で高笑いの安倍首相 政権2年目、「高転び」となる危険性

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安倍首相と猪瀬都知事は、ともにほぼ1年前に権力の座に就き、9月のオリンピック招致決定のIOC総会では並んで歓喜の声を上げたが、就任1年後は明暗を分けた。

猪瀬知事は「最高得票都知事」から「史上最悪の都知事」へ、急墜落となった。一方の安倍首相は、株高と円安と成長回復、高支持率維持に加え、7月の参院選勝利による「衆参・与党1強」実現、オリンピック招致成功、10月の消費税増税実施の決断、12月の特定秘密保護法案成立と事が運ぶ。狙いどおりどころか、予想以上の好調な1年で、高笑いだろう。

再登場の1年前は、失敗に終わった第1次内閣の教訓を肝に銘じて、「安倍流」といわれた「理念派・対決路線・猛進型」を封印し、「現実派・対話路線・じっくり型」の「ニュー安倍」を心がけた。経済最優先路線と慎重運転の政権運営が功を奏して、参院選の乗り切りに成功した。

ところが、「衆参・与党1強」で、自信回復を通り越して、急に自信過剰となったのか、地金の「安倍流」が見え始めた。IOC総会での福島の汚染水問題の説明でも、大見得発言を口にした。10月からの臨時国会では、所信表明演説で「成長戦略実行国会」と説いていたのに、「秘密保護国会」に仕立て上げて暴走した。

よく見ると、1年目は弱体野党の自滅、内外の経済環境、オリンピック招致、与党内のライバルの低迷など、ツキに恵まれた「出来すぎ」という面が少なくない。なのに、その点を見忘れ、16年までの衆参無選挙の「黄金の3年」を手にして、長期政権視野に入れ、「大宰相」を意識し始めたのかもしれない。

だが、未熟な政権運営と不様な退陣劇の第1次内閣時代と比べて、政治リーダーとしての力量と器はどこまで熟成・拡充を遂げたのか。国民は目を懲らして査定中だ。リーダーとしての真贋が明らかになる政権2年目、「背伸び」が過ぎて「高転び」となる危険性は大きい。それでは、真贋を見極めるための「14年の安倍政治」のポイントは何か。

その分析は次回に。

(写真:Rex Features/アフロ)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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