ファッション誌だと、(シャツやスカートといった)アイテムからコーディネートに落とし込むような作りになっている場合が多いですよね。実際、スタイリストさんも、そのほうが服を選びやすくて楽なんですね。ただ、目指す女子像が先にあったほうが、誌面を作る際にまとまりが出ます。
極端な例えかもしれませんが、ワンピースを着ることを目的に早起きしようという人は、あまりいないと思うんですね。ここに出かけるからとか、誰々に会うからとか、そういう目的があって、明日はかわいいワンピースを着ようと決めるわけです。そこのニーズに応えたい。結局、モノが先行していると、その人の生活に根付いた提案ができないのではないでしょうか。
1人の彼から見られる自分を、細かく想定
――生活に根付くファッション、ビューティですか。
そうです。そうとう細かなシチュエーションで見せるようにしています。撮影する場所も『ar』の場合、海や山ではなく、ほとんどが街中や部屋の中です。モデルも基本は日本人。自分にしっかり置き換えられることが重要です。メークは特に、日本人と骨格がまったく違う外国人のモデルで見せられても、参考にならないですよね。
12月号では、先ほど話した「1人モテ」を軸に、彼から見られる自分を徹底的に分析しています。まずは普段歩いているときなどに想定される、少し上から見られた場合。ほかにも、横に並んだ場合、もう少し接近した場合、さらに超接近の場合などです。それぞれの場面に適したアイラインの入れ方とか、ヘアアレンジとか、細かいところまで提案しています。距離と角度別、傾向と対策です。
――企画を作るときは、やはり編集会議が軸になっているのでしょうか。
そうですね。以前、マーケティングやリサーチをがっつりやったうえで企画を作ったことがありましたが、まあ、それが面白くならないのです。まず作っている側の気分が乗ってこない。しかもそういう場合、ほかの雑誌と企画がカブります。たくさんある女性誌の中で埋もれない、突き出た雑誌を作ろうとしているので、そのあたりには徹底的にこだわります。
おかげで、よくも悪くも、ネットで話題にしてもらえるようになりました。「なんか変な本があった」と書かれるだけでも、誰かの目に留まることで購入に結び付く可能性があるわけですから、とてもありがたいことだと思っています。
――20代後半の女性だと未婚者も多いでしょうし、『ar』読者は、けっこうおカネを持っているのではないですか?
そのようですね。読者にアンケートを取ったら、けっこう実家暮らしが多い。しかも職場では制服を着ているような仕事の方が多く、オフのときのファッションやヘアメークの参考として見てくださっているようです。キャリアファッションに力を割かなくていい分、休日の服におカネをかけられるし、かけたいと思っている。そうすると、本当に自分の気分にあったものを買いたいはずなので、そこを刺激するようなシーン作りを心掛けています。
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