パナソニック社長、在任8年でも退任できぬ事情 「ポスト津賀」には「4人のキーマン」が浮上
実は楠見氏、1月に発表されたトヨタとパナソニックの車載電池合弁設立にあたっては、「最前線で交渉にあたった中心人物」(ある社員)。同合弁は、トヨタが出資比率51%の会社に、パナソニックがテスラ以外の車載電池事業をまるごと移管したという点で、実質的に、トヨタへの電池事業売却にあたる。同事業の母体となった旧三洋電機の出身者からは、「いったいなんのために三洋を買ったのか」と批判の声も強い決断だ。
その責任者が昇任したということは、「パナソニック1社で、テスラとトヨタの両方に投資する体力はない。ほかの電池事業を移管することで、テスラの電池事業に集中して投資できる環境を作り、車載電池の収益化にメドをつけたことが評価された」(前出の社員)と言える。
4月からはテスラ事業も、日本を主体とする車載事業から、新設のUS社に移管される。楠見氏は、単なる車載部品作りにとどまらない車載事業の可能性を考え直す、難しい課題を担当することになりそうだ。
元日本マイクロソフト会長の樋口氏も
最後が、昨年度にも引き続き企業向けの物流システムや機内エンタテイメントなど、BtoB事業を束ねるコネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行氏(61)。新卒でパナソニックに入社するも、ハーバード大学でMBAを取得後、1992年に転職。外資系企業を転々とし、日本マイクロソフトの会長などを務めたのち、2017年にパナソニックに出戻ったという異色経歴の持ち主だ。
現在は、現場の課題に対するソリューションを提供するというアプローチで、BtoB事業の事業拡大に挑む。営業効率改善のために、カンパニー本社を大阪から東京へ移転し、オフィスにフリーアドレス制を導入。社内調整を減らし、外向き仕事に集中できる環境を作るなど、「働き方改革」にも熱心に取り組んでいる。
年齢は津賀社長の1つ下。社長になるとしたらワンポイントリリーフになるが、「CNS社がパナソニック全体の風土改革の模範になっている。ぜひ次の社長になってほしい」など、若手社員からのラブコールは絶えない。
4人のキーマンは、樋口氏以外いずれも50代。パナソニックには、松下幸之助が退任した66歳が社長定年、という不文律があるといわれているが、仮に津賀社長が2019年から3年間の中期経営計画をやりとげたとしても、キーマンたちに津賀後継としての時間は十分残されている。津賀社長としては、各人に難しい課題を与えることで最適な後継者を見極めていこうという意図もあるだろう。
車載電池に代わる屋台骨探しと後継者探し。津賀社長に課された「あと一仕事」は、並大抵の難しさではない。
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