パナソニック社長、在任8年でも退任できぬ事情 「ポスト津賀」には「4人のキーマン」が浮上
車載電池の収益化に手間取っているうちに、足元では別の問題も出てきた。2月に発表された2018年4~12月期業績では、営業利益を当初計画の5000億円から400億円下方修正した。主因は、欧州で手がける車載インフォテインメント(表示機器)システムにおけるソフトウェア開発の失敗だ。
顧客から開発途中で追加オーダーを受けた製品の一つについて、本来は追加開発分の値上げを要求すべきところ、「価格交渉の機会を逸した」(IR担当者)。その結果、追加の開発コストを全額パナソニック側がかぶることになった。製品を納入しても利益が出ないことが判明したため、開発資産を減損することになった。
さらにこれまで盤石だった家電事業にも不穏な風が吹き始めている。中国市場向けのエアコンが落ち込んでいることに加え、国内の白物家電も変調を来している。特に、国内トップシェアを誇る冷蔵庫が今年秋以降、急激に減速。「三菱電機や日立、シャープなどがパナソニックをベンチマークに、ほぼ同じ機能、容量で、より安価なモデルを投入しはじめたことが打撃になっている」(大手家電量販店)。
これらの結果、2018年度の業績は、中期経営計画で目標としていた営業利益5000億円を大きく下回る3850億円となる見通し。これには土地売却による約200億円の臨時収入も含まれており、実力値はさらに低いことになる。本来なら3月末に全社員に示されるはずの次の中計も、現状を鑑み、延期が決まったという。
4月人事で見えた「ポスト津賀」の顔ぶれ
車載電池を主軸とした成長シナリオを見直す必要に迫られた津賀社長が2018年の10月に打ち出したのは、「くらしアップデート業」になるという新目標だ。
いわく、従来のような単品売り切りモデルから、スマートフォンのようにOS(基本ソフト)のアップデートにより機能刷新していくビジネスモデルに転換することで、継続的に収益を得ていこうというもの。
これに伴い、これまで家電、住宅など手がける領域ごとに分かれていた組織も、「横串を刺して、より大ぐくり化するなど、変えていく必要がある。車載事業に関しても、単なる電池メーカーから、『モビリティ』などコト軸で考えていく方向に向かわなくてはいけない」(津賀社長)。さらに、注力市場である中国、北米を管轄するカンパニーを4月に新設することも決めた。
今回の役員人事では、この「くらしアップデート」新体制を担う各事業部の布陣も明らかになった。次期社長もこの中から選出されるとみていいだろう。中でもキーマンとみられるのが、以下の4人だ。
【2019年3月8日18時注記】初出時の上記図表で、品田正弘常務執行役員の名前と、コネクティッドソリューションズ社の名前が誤っていました。お詫びして修正いたします。
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