事務系仕事しかできない人を待つ「淘汰」の未来 AI時代に「10年後なくならない」仕事は何か?

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それに対して日本では、バックオフィスの仕事は主に非正規という「身分」の労働者が行っているが、正規の「身分」の労働者、すなわち正社員の中にもバックオフィスの仕事をしている人がいて、混然一体となっている。そのうえ正社員の中で、誰がスペシャリストで誰がバックオフィスなのかもよくわからない。

ひとを「身分」で差別してはいけないというのは、近代市民社会の最も重要な約束事だ。ところが日本の会社は、社員を「正規」と「非正規」という身分に分けている。これは現代の身分制そのもので、いま日本社会の大きな問題になっている。これを世界標準の働き方にそろえようというのが「働き方改革」だ。

拡張可能な仕事と拡張できない仕事

次に、この3つの仕事を別の角度から見てみよう。

映画俳優と演劇俳優はどちらも同じような仕事をしているけど、映画はクリエイター、演劇はスペシャリストの世界だ。これは、その仕事が「拡張」できるかどうかで決まる。

テクノロジーの進歩によって、あらゆるコンテンツがきわめて安価に(ほぼゼロコストで)複製できるようになった。

『スター・ウォーズ』のように大ヒットした映画は、映画館、テレビ、DVD、インターネット配信など、さまざまなメディア(媒体)によって世界中に広がっていく。ネットの配信数には上限はないから、理論上は、地球上に住むすべての人がお金を払って映画を楽しむことができる。これは、富にも上限がないということだ。

それに対してバックオフィスは時給計算の仕事だから、収入は時給と労働時間で決まり拡張性はまったくない。時給1000円の仕事を8時間やれば8000円で、それ以上にもそれ以下にもならない。

このように考えると、医師や弁護士、会計士などの仕事も拡張性がないことがわかる。テレビドラマに出てくる天才外科医は1回の手術料がものすごく高いかもしれないが、手術件数には物理的な上限があるから、富が無限に拡張していくことはない。同様に、弁護士や会計士も扱える事件やクライアントの数には上限があるだろう。彼らは極めて高い時給で働いているが、それでも拡張不可能な世界の住人なのだ。

クリエイティブな仕事をしていても、クリエイターは拡張可能で、スペシャリストは拡張不可能だ。このようにいうと誰もがクリエイターに憧れるだろうけど、成功するのはごく一部という厳しい世界で、タダ働き(ときには持ち出し)になることもある。

それに対してスペシャリストは働けば必ず収入が得られるし、年収2000万円や3000万円になることも珍しくない。ただしそれに伴って、責任も大きくなっていく(医者は誤って患者を死なせてしまうと医療過誤で訴えられる)。

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