事務系仕事しかできない人を待つ「淘汰」の未来 AI時代に「10年後なくならない」仕事は何か?

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難しい試験を通った優秀な人たちを集めて、こんな作業で膨大なマンパワーを浪費するのはあまりにもったいない。面倒なことはすべてAIにやってもらって、専門家本来の仕事に専念してもらったほうがずっといい。

将来的にはロボット医師やロボット弁護士が登場するかもしれないが、それはまだずいぶん先のことで、当面は、AIのような新しいテクノロジーは(優秀な)スペシャリストの収入を大きく引き上げるだろう。

それに対して、バックオフィスの仕事の雲行きはかなりあやしい。いうまでもなく、それがマニュアル化された仕事の集まりだからだ。

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その典型が銀行のバックオフィス部門で、お金を計算したり、ある口座から別の口座に移したり、外国のお金に両替したりすることは、コンピュータ―が最も得意とすることだ。

そのため、近い将来銀行の仕事の多くは機械に置き換えられて、銀行そのものもシリコンバレーのグローバル企業に吸収されるか、淘汰されるのではないかといわれている。

アマゾン銀行やグーグル銀行が登場すれば、日本の銀行はみんな消えてしまうだろう。ブロックチェーンを利用して「1アマゾン」とか「1グーグル」という通貨が発行されるかもしれない。

かつては大学生の人気就職ランキングで常連だった大手銀行が軒並み順位を大きく落としているのは、10年後には会社ごとなくなっているのではないかと思われているからだし、この不安には根拠がある。

男性の多くが仕事を失った

ただし、時給で給与が払われる仕事の中にもAIでは代替できないものがある。代表的なのは看護や介護などの仕事で、そこでは患者や顧客への共感力が重要になる。

IQは知能指数だが、EQ(Emotional IQ)は「こころの知能指数」といわれる。EQの高い人は、他人の感情を理解し、自分の感情をコントロールする能力が高い。EQの定義には諸説あるけれど、すくなくとも共感力については、男性よりも女性のほうが高いことがさまざまな研究で明らかになっている。本格的なAI時代が到来しても、女性は機械を補助にしてずっとうまく適応できるのだ。

そしてこれは未来予測ではなくなっている。アメリカでは自動車工場などの仕事が外国に移転され、あるいは機械化されて、人間をあまり雇わなくてもよくなってきた。こうして多くの労働者が職を失ったのだが、その大半は男だ。それに対して、「ピンクカラー」と呼ばれる共感力を必要とする女性の仕事はあまり影響を受けていない。

これは、たんなる外国の話ではない。機械がバックオフィスの仕事を次々と代替していけば、日本でもいずれ同じことが起きるだろう。

橘 玲 作家

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たちばな あきら / Akira Tachibana

2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。新書大賞2017受賞の『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)ほか、近著の『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)などベストセラー多数。公式サイト http://www.tachibana-akira.com/

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