正念場ハウステンボスが密かに打つ「次の一手」 子会社化10年、煮え切らない上場表明の背景
そこで澤田氏が検討したのが新たな出資の受け入れによる再成長だ。報道によれば、澤田氏は2018年12月、ハウステンボス内で開いた決算会見の場で、中国のコングロマリットである復星集団(フォースングループ)からの出資受け入れと、東証への上場を検討していると表明した。
フォースンは不動産開発を中心に保険やアパレル、製薬会社などをグループに収める巨大企業。日本では2015年に北海道のリゾート施設「星野リゾートトマム」の不動産を買収して話題になった。最近ではフランスの高級ブランドのランバンを買収している。
フォースンは年間20万人の送客と約25%の出資を提案したようだ。また澤田氏はあるインタビューで「2019年に新しいパートナーを入れ、3年後に東証上場、5年後にうまくいけばカジノ開場」という将来像を語っている。
とん挫した出資受け入れ構想
ただ2月12日、「背景にはさまざまな要因があるが、条件が折り合わなかった」(HIS)として、フォースンからの出資受け入れの検討中止を公表。フォースンが中国当局による海外投資の規制に抵触したため、出資を断念したともうわさされている。
一方で澤田氏が掲げた「3年後」(HIS側は未定と説明)という東証への上場について、そのまま準備を進めることを公表した。
一般的に親子上場では親会社は株式売却によるキャッシュインが、子会社にとっては経営の自由度が増すメリットがあるとされる。
HISの資金需要は大きい。主力の旅行事業はM&Aによる成長を、ホテル事業は「変なホテル」で開業攻勢を、新規事業として今年中にバイオマス発電所を稼働させる計画だ。ホテルだけで200億円、M&Aも含めて年間総額500億円の投資枠を設定している。
一方のハウステンボスは民事再生を申請するほど経営が厳しかったという事情もあり、これまで莫大な投資が必要な大型アトラクションの導入をなるべく避けて、「光の王国」のようなイベントで集客してきた、という経緯がある。
もちろん、HISとハウステンボスの担当者が口をそろえるように、「(アトラクションや設備を次々と増強する)ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と同じことをやっても勝てない」というのも現実だ。
ハウステンボスに強い味方がいるとすれば、手厚い行政の支援だろう。車で約20分ほどの距離にある佐世保港では2018年7月に拡張工事が完了し、従来より倍以上も大きい国際クルーズ船が発着できるようになった。2020年4月頃にはより近い地区でも岸壁の整備が計画されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら