正念場ハウステンボスが密かに打つ「次の一手」 子会社化10年、煮え切らない上場表明の背景

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こうした港湾整備の結果、佐世保市はクルーズ船の寄港回数を2016年の64回(乗降人員数7.9万人)から2020年に295回(同66.3万人)、2024年には395回(同90.3万人)へと大幅に増加させることを見込んでいる。

その先にあるのは、統合リゾート(IR)誘致だ。IRは2020年代半ばに開業が計画されているが、場所はまだ決まっていない。長崎県は官民一体で佐世保への誘致を進めており、もし決まれば、ハウステンボスへの恩恵はケタ外れだ。

昨年12月、HISの決算会見でハウステンボスについて語る澤田秀雄会長兼社長(編集部撮影)

報道によれば澤田氏は2018年12月の会見でIRについて「国内外の競争に勝つには、数千億円規模の投資が必要。効果が見合っているのか、見極める必要がある」と発言したという。

従前から澤田氏はIRをやるのであれば、差別化のために水中カジノにするという意向を示している。年商数百億円のハウステンボスでは到底捻出できる金額ではない。HISにしても単独で手掛けるにはリスクが大きい。

そこで浮上したのがハウステンボスを上場させ、カジノ建設のための資金を市場から調達したり、外部のパートナーを呼び込むという手法ではなかったのか。

スカイマークも上場させ、外部資本を呼び込んだ

実は澤田氏はかつて、同じように子会社だった航空会社スカイマークを、外部に委託していた機体整備などを自社で行うため上場させた経験がある。

1996年にスカイマークを設立、2000年に上場した際にはHISが5割強の株式を保有していた。2003年に西久保愼一氏が増資を引き受ける形で経営権を引き渡し、その後は段階的に出資比率を下げていった経緯がある。

直近の業績は伸び悩んでいるとはいえ、IRの思惑もありハウステンボスの重要性に変わりはない。HISが明言を避けるため、これまで以上に澤田氏の言動に注目が集まりそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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