問題は、恒久的施設ではなく、デジタル経済にふさわしい何か別の基準によって課税するにはどうすればよいかである。主に3案あり、ネットでの利用者の「参加量」(利用者数や使用データ量など)に応じて、そこからあがる利益に対する課税権を国際的に配分する案で、イギリスが提案している。アメリカは、顧客基盤などのネットビジネスの無形資産に応じて課税権を配分する案を出している。巨大ネット企業が持つ無形資産に着目した課税も、広義のデジタル課税なのだ。
もう1つは、恒久的施設の概念を広げて、利用者や契約の存在、売り上げの発生、現地語のウェブサイトや現地通貨決済などの「デジタル要素」が存在する国や地域を「重要な経済的存在」と認定し、その量に比例して課税権を国際的に配分する案だ。これはインドなど新興国が支持している。前述のインドの課税強化はこの案を具現化したもので、利用者数と売上高を指標にして課税する予定である。
今般の整理では、これらの案が列挙されたにとどまり、国際的な合意はまだ得られていない。しかし、合意が得られそうにないからといって、2020年までの合意は難しいと決めつけるのは早計だ。合意が得られないなら独自に課税する国がすでに出始めている。デジタル課税に消極的な国が消極的な態度のままだと、逆にそれが引き金になって無秩序なデジタル課税が広がる恐れがある。
デジタル税はGAFA狙い打ち?
もう1つの論点である低課税国対策では、低課税国に拠点を置く企業に対して、法人税率の最低水準を設けることなどが提案されている。
デジタル税は、GAFAを狙い撃ちにした課税という話に聞こえたり、新たなネットビジネスの芽を摘む課税という話に聞こえたりする。そうした見方に捉われると、国際的な合意は難しいように見える。
しかし、そうではなく、既存のビジネス形態で営業する企業と新興ネット企業との間で、税制上平等な条件を担保するための取り組みと捉えるべきだ。一方は適正に納税しているのに対して、もう一方は国際的な課税逃れをして税負担が軽くなっている状態は放置できない。各国の税務当局は、一部に軽課されている現行税制を放置できない点で一致しており、国際的な合意に向けた求心力はそこにあるといえる。
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