日本の財務省をはじめ、主要国の税務当局は、法人税をなくしたり軽くしたりすることなどありえない、という見方に立っている。それゆえ、冒頭で触れたBEPSプロジェクトを懸命に進めているといってよい。実は、これこそがデジタル課税をめぐる国際協調の求心力になっている。
冒頭の政策覚書は、1月23~24日に開催されたBEPS包摂的枠組会合で参加国が全会一致で認めた内容である。巨大プラットフォーム企業を多く抱え、デジタル課税に消極的とされるアメリカや中国も含まれる。OECDとG20は、2020年に最終報告を取りまとめるべく目下議論を進めている。この会合を受けて、2月13日にはOECDから論点整理文書が出された。
G20といえば、2019年は日本が議長国である。6月には財務大臣・中央銀行総裁会議が福岡市で、首脳会議が大阪市で開催される。最終報告が取りまとめられる2020年のG20議長国はサウジアラビアである。サウジアラビアは原油収入の豊富な富裕国だっただけに、国際課税でイニシアチブをとるノウハウが少ない。そのことは、欧米諸国も理解している。
2020年までの取りまとめを考えると、日本が議長国である2019年中にある程度の合意ができないと、2020年の取りまとめは難しいだろう。
事業拠点がないと課税できないのか
今般OECDから公表された論点は、主に2つある。1つは課税権の配分、2つ目は低課税国対策である。これらの論点について、国際的に意見は分かれているが、具体策を意識した検討が進んでいることがうかがえる。
1つ目は、デジタル経済の時代には、事業拠点(恒久的施設)がなければ課税できないという、法人課税の国際的な原則で臨むと課税されない問題への対処である。巨大ネット企業は拠点を持たずにビジネスができるため、「恒久的施設なくして課税なし」の原則にこだわれば、法人税は課税できない。
この点は、巨大ネット企業が顧客を相手にビジネスをして利益をあげた場合、その顧客が実質的に取引している国や地域で、その利益に課税できるようにする方向で議論が進んでいる。
法人税でなく、消費税で課税すれば、巨大ネット企業も課税からは逃れられない。とはいえ、前述のように、国際的な議論は法人税をなくすことはありえないという前提で進んでおり、法人課税の中でどう対応するかが問われている。
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