テレビ局をやめた僕が全く後悔していない理由 福原伸治「メディアの景色を変えたい」

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会議も1時間を超えることはない。事前にアジェンダをGoogle Docsで共有し意見を書き込んでおく。会議に紙は一切なく、みんなノートブックPCを持ち込んで資料を共有する。会議を1時間内に終えるためにどうするかを考えて、議論するテーマをはっきりと決めて事前準備しそれぞれの意見を考えておく。効率的に働くためにどうしたらいいかを考え、工夫してそれを実行する。その結果、残業もほとんどすることなく週に2日きっちりと休むことができる。

つまり「働き方改革」とは働く時間を短くすることが目的ではなく、どうやって仕事を効率的にするかを考えることである。結果として働く時間が短くなるのだ。これは別に今の会社が特別ではなく、ITベンチャー企業はだいたいこういう形を取るケースが通常だったりもする。

そしてここは年功序列はまったく関係ない。いいコンテンツを作れる者がえらい。年齢・性別に関係なく意見を言い、主張をする。若い人間に教わることが本当に多い。いろいろな考えや視点についていくだけで必死だ。つたない英語でついていくのも大変だ。

たぶんここで書いてきたことはある種の企業にとっては当たり前のことだろう。

ジャンルによってはネットはテレビを凌駕している

翻ってテレビの世界はどうか。放送局ではできるだけ会社に長くいるやつが仕事をしているように見える。残業時間の多さや徹夜が自慢になる。会議は長ければ長いほど、よりいいものができると信じて疑わない。ギリギリまで粘る。紙の資料は多ければ多いほどいい。相変わらずの年功序列。アシスタントディレクターはディレクターの言うことには逆らえない。とにかく言われたことをこなす。ディレクターより先に帰ると嫌味を言われる。最近はめっきり減ったと聞くが、依然としてそういう文化が染み付いている。

局内の一定の役職以上の集まりになると、ほぼ8割近くが男性。表面上はほぼ見えないが、どことなく残る男尊女卑。テレビの世界は世間以上に保守的かもしれない。

90年代のころは、テレビはまだまだ柔軟性があってチャレンジ精神も旺盛だった。深夜番組は文字どおりパイオニアだった。そこからいろいろな番組や制作者が羽ばたいていった。そういうインキュベーションの場というのが、今はあるのだろうか。おそらくネットがそうなるべきだったのだけれど、ネットに対する距離感には複雑なものがあった、とだけ書いておこう。

そしてこちらの世界では、テレビのやり方や考えはほとんど通用しないと思ったほうがいい。それだけネットの動画の世界は進んでいる。テレビの人間は「ネットの世界に教えにいく」というふうに思っている人が多いかもしれないが、もはやかなりのジャンルでテレビの世界を凌駕しているのではないだろうか。

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