人口9600人「地球上で最も幸福な町」のリアル フィンランドの小さな町に何があるのか

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ビルの地下にある広い部屋では、大きな機織り機を使ってカーペットを作ったり、陶芸をしたりしている。1階では聖歌隊が歌い、その上の階ではキリスト教正教会のイコンのレプリカに色をつける人もいれば、ヨガをしている人もいる。

センターは州と市から助成を受けており、住民は低料金で夜間講座を受講することができる。センター長のロジェル・レンマンは、講座の種類について「基本的に人々が興味のあるものすべて」と説明した。

100以上のスポーツや文化系クラブ

つねに全人口の約15%の人々がセンターに集い、講座によっては1時間の料金が1ドル未満のものもある。フィンランド全土にこうした施設はあるが、カウニアイネンのセンターは、町の規模からしても、とりわけ活動が盛んだ。

町には100以上のスポーツや文科系のクラブがある(写真:Lena Mucha/The New York Times)

退職して絵画の講座を受講しているセイヤ・ソイニは、こうしたサービスがカウニアイネンをほかよりも楽しい町にしていると話す。「いちばんの理由は、みんな何かしらやることがあるということ。これみたいにね!」と、姪の肖像画を描きながらソイニは言う。「心理療法みたいなものよ」。

カウニアイネンの住民のアクティビティは、このセンターだけではない。州から資金援助を受けているサービスはほかにもいろいろある。

この小さな町にスポーツや文化系クラブが100以上あり、すべて地元自治体の助成を受けている。スウェーデン語を話す少数派のためのクラブにスキー場、児童向けの音楽学校に芸術学校、運動競技場、スケート場、健康のために上り下りができる屋外の専用階段まである。

20年前に住民の間でアイスホッケー場とハンドボール場のどちらを作るべきか議論が起きたとき、地元議会はその両方に助成金を出すことで問題を解決した。

公的機関で唯一足りないものは、警察署だ。だが犯罪率は低く、その必要性がない。

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