7期ぶりの減益! ゴーンを悩ます日産の「病巣」

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部品会社は批判一色

「ゴーン社長は08年度から3年間で33車種の新車(その前の3年間では28)を出すと言うが、新車の数にこだわりすぎ。車の魅力度が重要なことを今の不振から学び取っていない」

 JPモルガン証券の中西孝樹アナリストは、そう指摘する。車の魅力に直結する技術革新では、その7割を部品メーカーが担うといわれるが、日産最大のアキレス腱はその部品メーカーとの関係が疲弊していることにある。

 ある上場部品メーカー社長はトヨタ自動車と日産との違いをこう表現する。「トヨタは部品メーカーを生かさず殺さず。日産は死んでもいいから(利益を)吸い上げる。それほど原価低減要求が厳しい」。

 別の社長は「(ゴーン社長着任直後の)『リバイバルプラン』のときは日産も部品メーカーも死ぬ覚悟。しかし、今は日産もいい利益を出しているから、同じようなコストダウンを要求されると当時とは違う気持ちになる」と言う。

 ボリュームの問題もある。「トヨタやホンダと違って日産は約束した納入数量を守ってくれないことが多い。それで多くの場合、持ち出し(赤字)になる」と、日産系列の部品メーカーは明かす。

 これはひとえに販売不振のためだが、そこには日産が重視するROI(投下資本利益率)が裏目に出ている面もある。「日産は14%といわれる期待利益率を上回らないと新車開発などに投資できないため、前提の販売計画台数を甘くする傾向がある」(証券アナリスト)。結果、台数未達→部品発注減少の悪循環に陥っているというわけだ。

 部品メーカーの日産批判の極め付きは、「種をまかない」という日産の提案力のなさだ。「部品の価格を下げるとき、トヨタやホンダの担当者は『この新材料に変えてみよう』とか『ここの塗装は省きましょう』とわれわれと一緒に考える。日産にはそういう提案がまるでない」と、部品メーカーは異口同音に語る。これは数字を追い求めるコミットメント経営の負の側面が背景にあるともいえる。

 部品各社に共通するのは「ホンネは日産から離れたいが、まだ取引額が大きいのですぐにはできない」との姿勢だ。こんな状態では、部品メーカーが日産車の技術革新に積極的になるとは考えにくい。ただ、初の減益決算でゴーン社長は「反省モード」に入った。今後、復活のカギを握る部品メーカーとの関係見直しに着手するかもしれない。

(書き手:野村明弘 撮影:鈴木紳平)

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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