中学受験失敗から「早慶合格」した子のリベンジ

中学3年間で子どもはたくましく成長する

“早稲田に受かる”という言葉にいちばん喜んだのは父親の純一さん(仮名)だった。自身が早稲田大学出身というのもあっただろうと、拓真君は振り返る。

家庭不和で落ち込む成績

最寄り駅から電車で数分の街にある校舎に入った拓真君。クラスは成績順になっており、3クラス編成のトップのクラスに所属した。

好きな野球もずっと続けていたが、その後も成績が落ちることはなく、それから5年生までの間、塾でのテストの偏差値は大体60台前半と順調な推移だった。

ところが、6年生の夏ごろ、偏差値55あたりまで一気に落ち込む。原因は、家庭環境の変化だ。

「ゴールデンウィークくらいに親が離婚したんです。これを理由にしたら逃げというか、弱いので、そう言いたくはないのですが……」

ある日、中学入試をいちばん応援してくれていた父親が家を出て行った。母親が病院で専門職として働いていたため、経済的に塾や受験をやめるというような決断には至らず、拓真君はそのまま通塾を続けた。だが、傍目には変わらなくても、繊細な小学生の心に大きな異変が起きていた。

「両親が離婚し、自分はこれからどうやって生きていったらいいんだ?と。アイデンティティーを求めてというか、受験生で時間はないのに『アンネの日記』などを読みふけっていました。あと、パワプロっていうゲームにはまって。ゲームと本に浸る毎日でした」

季節は夏を迎えていた。ゲーム漬けの毎日がよくないことは自分でも十分にわかっていたが、やめられない。でも、受験もやめたくない。

思いどおりにならない日々から抜け出すための糸口として、受験という選択肢は手放したくないという気持ちだったのかもしれない。拓真君は受験をすることを改めて決意する。

目指したのは完全中高一貫の進学校、海城中学。近年は、毎年のように2桁の東大現役合格者を輩出する人気校だ。昨年度も約40人の東大現役合格者を出している。

男子の最難関、御三家といえば「開成」「麻布」「武蔵」だが、最近では「海城」を含め「駒場東邦」「巣鴨」が“新御三家”と呼ばれるほどに人気化。ある中学受験情報誌を見ると、東大、早慶上智の現役合格率は開成と肩を並べている。

それ以外に受けたのは、城北。海城から数ポイント偏差値は下がるが、こちらも偏差値60超の人気校だ。「母親はそこまで細かく関与してこなかった」という拓真君。自ら、この2校だけを受けることに決めた。

「勉強をできていない状態でしたが、やはり東大には本気で行きたかったから、選ぶ余地はありませんでした。ここがダメなら公立に行けばいいと、年明けぐらいに腹を決めました」

小学6年生でこれだけのことを自ら考えて決断する力には、正直ちょっと驚いてしまう。中学受験は「早熟な子」が向くとも言われるが、拓真君もそういう子のひとりであったのかもしれない。

ただ、親の離婚やゲーム生活が響いたのか、結果は2校とも不合格。自分で決めた通り、中学は地元の公立へ通い、高校受験でリベンジすることにしたという。

次ページ苦手な数学が偏差値30台に…
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • ポストコロナの明るい社会保障改革
  • 今日も香港から
  • ドラの視点
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
スペシャルインタビュー<br>元ラグビー日本代表・畠山健介

今年から米メジャーリーグ・ラグビーのチームに所属、華やかな選手生活とは裏腹に幾多の葛藤を乗り越えてきた畠山選手。「ラグビーファンの拡大には、リーグのプロ化が不可欠だ」。新天地にいる今だから見えてきた日本ラグビー改革論を熱く語ります。