「大学にはそのまま上がれるので、その分、何か資格をとる勉強に回そうと思って。将来の夢があり、そこに必要な資格の勉強をしています」
まるで大学が下に伸びたかのような生活だ。
「自由な校風で、校則もほとんどありません。同級生の中にはすでに大学での起業を見据えて準備を始めている人もいて、とにかく面白いやつらがそろっている学校です。先生たちも僕らのことを信じてくれている。この学校に入学できて、本当によかったと思っています。僕は、この学校は日本でいちばんだと思っていますよ」
それほどまでに愛着を持てる学校に出会えたことは、彼にとって何よりの宝だろう。
「中学受験がすべてではない」
受験の日々を振り返り、彼は何を感じているのか。
「中学受験でいろいろあって、悩んだ時期がありましたけど、自分の人生についてどっぷり向き合って考えるいい機会になっていたと思います。あの時間は、僕にとって必要だったんです」
そう語る拓真君は、中学受験がうまくいかなかった“後輩たち”にこんなメッセージを贈る。
「今回ダメだったという人に言いたいのは、中学受験がすべてじゃないということ。公立中でもやり直すことはできます。
受験生活の中で、勉強しない天才というものも見てきました。でも、受験は結局、やるべきことを気合いで頑張るぞっていう世界。やるか、やらないかの違いはとても大きい。勉強しない天才よりは、勉強する凡才が勝つようにできていると思います」
拓真君のケースを読んで「彼はもともと優秀だっただけ」と思う人もいるかもしれない。実際、両親の離婚というメンタルショックがなければ、もしかしたら中学受験で桜を咲かせていた可能性もある。
だが、人生とは計算できないことの連続だ。彼はそのことを幼くして悟った。自分が勉強せずに合格できる「天才」ではないということも。そして、立ちあがるために必要なのは、自らの努力。努力したものだけがはい上がることができる――。
中学受験の世界ではよく「成熟度が重要」というが、中学に入ると子どもは大きく成長していく。人によりその内容や程度は違うだろうが、かつて両親の離婚からゲームに没頭した拓真君はいま、見違えるほどにたくましく成長している。
中学受験同様、高校受験についても親にはあまり詳しく相談せずに過ごしてきたという拓真君。それぞれの受験を通して、大人になる過程での大切なものを掴んでいったように見える。大人びたその口調から、彼の精神が受験によって強さを増したことを感じた。
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