日本人がおよそ知らないアメリカ人の「頭の中」

多くが理性と現実を手放す中で残る希望と光

時系列に沿って話が進んでいくため、もちろんラストの部分で扱っているのはトランプ政権だ。

21世紀の最初の15年間で、共和党は幻想党に変わり、現実ベースの一派は幻想派に取り囲まれた。極右の反体制文化が何百万もの支持者に力を与え、アメリカの右派を乗っ取った。30年前に急進派が福音派や銃擁護のロビー団体を支配したのと同じだ。(下巻348ページより)

今は希望と光の時代

そして今や、トランプが(感情やノリで)先導するアメリカは、非常に危険な状態にあるように見える。同じことを感じている人は少なくないはずだが、著者は悲観的ではなく楽観的なのだと記している。

あまりにも多くのアメリカ人が理性と現実を手放してはいるものの、今は希望と光の時代だというのだ。

たとえばこの30年間で、アメリカは殺人やその他の暴力犯罪を半分以下に減らし、ヒトゲノムを解読し、アフリカ系アメリカ人の大統領を選出した。地球上で極端な貧困状態にある人たちの割合は40パーセントから10パーセントに急減した。非合理性と魔術的思考に退行していることには絶望を感じるが、すべてが悪いほうに向かっているわけではないということだ。

だが著者はここで、至極当たり前な、しかし、とても重要な提案をしてもいる。

「私たちは、今よりも軟弱者でなくなる必要がある」というのだ。危険なまでに真実でなく現実でないものは、非難しなければならない。事実として正しいこと、疑わしいこと、間違っていることを区別するのに、少なくとも宗教以外では、好みや「適切」「不適切」についての個人的意見が大きく影響することはないだろう。ただし、そこではアメリカを再び現実ベースにする闘いが求められるのだという。では、そのためには何をすればよいのか?

それぞれ自分の身近なところで頑張って闘おう。ジョージ・ソロスやウーバーがマッスルカー(訳注:アメリカの大排気量スポーツカー)を非合法化しようと企んでいる、と主張する見ず知らずの人に議論をふっかける必要はない。だが、知り合いや友人や家族がおかしなことを言ったら、見すごさないようにしよう。子どもや孫がいれば、正しいことと間違ったこと、ばかなことと賢いことの区別を教えるのと同じぐらい厳しく、真実と嘘を区別することも教えよう。(下巻396ページより)

アメリカにファンタジーランドへ向かう傾向が初めからあったとしても、現在の状況は必然の結果ではないと著者は主張する。なぜなら、歴史と進化に必然はないから。同じように、特定の未来に向かう必然性もない。

『ファンタジーランド:狂気と幻想のアメリカ500年史』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

つまり、国のバランスと落ち着きを取り戻すことは可能だということだ。過去数十年は1つの段階、進行中の物語の奇妙な一幕、アメリカの実験の残念な一エピソードにすぎず、やがて過去の出来事になるということ。

だからアメリカは今、ファンタジーランドのピークにあると願いたいというのだ。だとしたら、そんな考え方を楽観的に捉え、そして身近なところで闘うのが望ましいのだろう。

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