日本人がおよそ知らないアメリカ人の「頭の中」 多くが理性と現実を手放す中で残る希望と光

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思わず笑ってしまいたくなるような話だが、確かにこう考えていくと、トランプ支持層の多さも、多くの報道を「フェイク・ニュース」だと信じ込んでしまう人の多さにも納得できる。

気をつけるべき点は、この3分の1や4分の1が常に同じ人たちではないということだという。さまざまな空想を信じている人たちが入り混じっているわけだ。

地球外生物の来訪や地球人誘拐を信じている人の中には、政府の大々的な隠蔽工作を信じている人もいれば、信じていない人もいるということ。政府の隠蔽工作を信じている人が、さらに広範囲にわたる陰謀の存在を信じているとは限らないし、それらの陰謀の存在を信じている人が、聖書のいうハルマゲドンの到来を信じているかどうかはわからないということ。

だから、アメリカという「ファンタジーランド」は、EU(欧州連合)のようなものだと著者は表現している。EUはまったく異なる国々の集まりだが、シェンゲン協定に加盟していれば、どの国の市民も別の国へ自由に行き来できる。アメリカ人も同じように、さまざまな信念の中を自由に渡り歩いているというのだ。

ファンタジーの根源を探る

ここでお断りしておくが、本書はそんなアメリカ人のことを「非常識なトンデモ人種」として面白おかしく紹介したものでは決してない。それどころか、「なぜ、こういう国になってしまったのか」ということについて、とことん検証しているのである。

アメリカは、何もないところから設計・創建された初めての国だ。壮大な物語を書くようにして生み出された最初の国である。たまたまそのころは、シェイクスピアやセルバンテスが近代的なフィクションを生み出しつつあった時期にあたる。新世界にやって来た最初のイングランド人たちは、刺激的な冒険に出た意欲的な英雄に自分をなぞらえていたことだろう。実際、魅力的な信念や、大胆な希望や夢、真実かどうかわからない幻想のために、慣れ親しんだあらゆるものを捨て、フィクションの世界に飛び込むほど向こう見ずな人たちだったに違いない。(上巻21ページより)

かくして上巻では、1517年から1970年までの時代をなぞることにより、ファンタジーが探られる。そして下巻は、1980年代から20世紀末までを扱った第5部、そして「1980年代から現在、そして未来へ」という副題のついた第6部で構成される。

次ページラストの部分で扱っているのはトランプ政権
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