ヘンリー・クラビス/ジョージ・ロバーツ コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)代表(共同創設者)
投資総額は31年間で実に2790億ドル。買収先の資産を担保に融資を受け、それを元手に買収するLBOファンドの草分け、KKRの共同創設者が初めて日本のマスコミの前に姿を現した。(『週刊東洋経済』5月12日号より)
ノンコアの上場子会社を多く抱える大企業に照準
1:欧州でヘッジファンド規制強化の動きが出ています。
クラビス ヘッジファンドではないので影響はない。KKRは企業経営者に協力して事業の成長を促す友好的な提案をしてきた。敵対的な提案をしたことはない。今ほど投資資金があふれている時代はかつてなかっただろう。欧米の大企業が買収ファンドを受け入れるようになったからだ。LBO(レバレッジド・バイアウト)ファンドは買収後に資産を切り売りすると批判されるが、大きな誤解だ。
2:ファンドの競合が激化する中でKKRの強みとは。
クラビス 投資先企業に長期的な提案を行っている。株式の保有期間は平均で7.5年だが、20年にわたる投資先もある。1980年代に投資したサンマイクロシステムズはいまだに株主だ。5月にはオリエントコーポレーションに2億ドルを出資する。31年かけてやっと日本企業に投資できたが、日本企業への投資も長期投資で忍耐強く進める。投資対象は化学、消費財、資源・エネルギー、金融サービス、ヘルスケア、製造業、メディア・通信、小売り、テクノロジーの9業種。利益の源泉は何か、投資先に新たな価値を付加できるかを徹底的に調べている。投資先に対しては、経営陣と一緒に詳細な「100日プラン」(再生計画)を作ることで関係強化を図っている。
3:ファンドが望むような子会社売却に、日本企業は賛同すると思われますか。
ロバーツ 日本の大企業は何百もの子会社を持っているが、ノンコア(非中核事業)の子会社からどれくらいの収益を得ているかを再考する必要がじきに出てくる。ノンコア子会社から資本を引き揚げ、より成長性のある事業に振り向けるべきだ。
4:日本も米国のように経営陣の意識が変わると思いますか。
ロバーツ 日本を見ていると、米国で創業した70年代当時を思い出す。ファンドの登場で米国の経営陣は目が覚めた。以前より効率よく資本を用いるようになった。同じようなことが日本でも起こると信じている。変化は外からの押し付けではなく、内部から起こるものだ。
5:31年間やってきて、投資ファンドにとっていちばん重要なこととは何ですか。
クラビス 言ったことを実行する一貫性だ。経営陣と握手をし、「これをやる」と言ったら、それをやる。31年間、努力してきて、それがいちばん重要な教訓だと思っている。誠実に忠実に、そしてモラルを持って仕事をすることが、KKRにとっては大切だ。投資額の平均3倍をKKRは出資者に返してきた。31年のIRR(年率換算の内部投資収益率)は27%だ。
(書き手:鈴木雅幸、山田雄一郎)
Henry R.Kravis
米クレアモント・マッケンナ・カレッジ卒、コロンビア大学経営大学院でMBA取得。中堅証券会社、米ベアスターンズのコーポレート・ファイナンス部門パートナー時代にLBOの手法をロバーツ氏と開発。1976年にKKRを創設。(写真上)
George R.Roberts
米クレアモント・マッケンナ・カレッジ卒、カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール卒。ベアスターンズを経て、ジェローム・コールバーグ(87年に辞任)、クラビス両氏とKKRを設立。クラビス氏とは従兄弟の関係。(写真下)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら