「リーマン・ペーパー2」で消費増税また先送り? 増税先送りの16年6月と今の経済環境を比較

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消費税率の引き上げの判断は「政争の具」となりやすく、その時の経済環境で決まる面はそれほど大きくないかもしれない。

また、なぜか「リーマン・ペーパー」は新興国に関連するデータの比率が高い。比較対象であるリーマン・ショックは先進国である米国発の金融危機であったにもかかわらず、である。使われている資料の4分の3がIMFのWorld Economic OutlookのChapter 1. Recent Developments and Prospectsのデータという点も、十分な準備が行われたわけではないことをうかがわせる。「お手盛り」と言われても仕方がないように思われる。

したがって、仮に「リーマン・ペーパー2」が出てくることがあれば、まったく違った経済指標やデータが使われる可能性もあるだろう。とはいえ、政治優先の安倍首相が「新しい判断」を考えるきっかけになった「リーマン・ペーパー」のデータの整理をしておくことは、2019年10月の消費税率引き上げの最終判断を予想するうえでも有益だろう。

消費増税再々延期の可能性は十分ある

まとめると、16年の「リーマン・ペーパー」作成時と比較し、現在の経済環境は以下のようになっていることがわかった。

① コモディティ価格は小幅ながらも一段と下落
② 新興国の経済指標は15年ほどではないが、悪化方向
③ 新興国からの資金流出の問題は足元では大きくない
④ IMFによる成長率の予測の下方修正は今回も同様

悪化している指標もあれば、改善している指標もあり、結果は「まちまち」だったと言える。「リーマン・ペーパー」作成時より悪化しているとは言い切れないが、経済環境は十分に良いともいえない。2019年10月の消費税率引き上げが再々延期される可能性は十分に残っている。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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