消費税率の引き上げの判断は「政争の具」となりやすく、その時の経済環境で決まる面はそれほど大きくないかもしれない。
また、なぜか「リーマン・ペーパー」は新興国に関連するデータの比率が高い。比較対象であるリーマン・ショックは先進国である米国発の金融危機であったにもかかわらず、である。使われている資料の4分の3がIMFのWorld Economic OutlookのChapter 1. Recent Developments and Prospectsのデータという点も、十分な準備が行われたわけではないことをうかがわせる。「お手盛り」と言われても仕方がないように思われる。
したがって、仮に「リーマン・ペーパー2」が出てくることがあれば、まったく違った経済指標やデータが使われる可能性もあるだろう。とはいえ、政治優先の安倍首相が「新しい判断」を考えるきっかけになった「リーマン・ペーパー」のデータの整理をしておくことは、2019年10月の消費税率引き上げの最終判断を予想するうえでも有益だろう。
消費増税再々延期の可能性は十分ある
まとめると、16年の「リーマン・ペーパー」作成時と比較し、現在の経済環境は以下のようになっていることがわかった。
② 新興国の経済指標は15年ほどではないが、悪化方向
③ 新興国からの資金流出の問題は足元では大きくない
④ IMFによる成長率の予測の下方修正は今回も同様
悪化している指標もあれば、改善している指標もあり、結果は「まちまち」だったと言える。「リーマン・ペーパー」作成時より悪化しているとは言い切れないが、経済環境は十分に良いともいえない。2019年10月の消費税率引き上げが再々延期される可能性は十分に残っている。
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