沖縄の若者が「戦後世代」との間に見る高い壁 分断と歴史、葛藤の島でもがく若者たち(2)

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昨年11月、ここでロックの集いを開いた。招待したミュージシャンが演奏を終えたときに、彼が生演奏に乗って即興のラップで歌い始めた。

「さっき言ってた米兵の問題

米兵だって俺ら大事にしてる

奴らも結局システムの犠牲者

奴らを思うからこそ

俺らのなかに共感して

どういう選択肢アプローチ作る

それを『若いから』というような

表現で片づけられたくない」

米兵も基地容認派も戦後世代も若者も、対立せずにつながりたい。少なくとも世代の違いを理由に拒まないでほしい。そんな悲痛なメッセージに聞こえた。

戦後世代にあえて苦言を呈する

世代間の分断を象徴するような出来事があった。

1月26日、沖縄国際大学の教室で、「『民意』はどう反映されるべきか~県民投票に向けて」と題する公開シンポジウムが開かれた。主催したのは、辺野古の新基地の是非をめぐり県民投票を実施するよう署名集めに奔走した「『辺野古』県民投票の会」。

シンポジウム後半のパネルディスカッションで演壇の席に座ったのは、県民投票の会の代表である元山仁士郎さん(27歳)をはじめとする学生らの若い世代だ。元山さんは、宜野湾市役所前で県民投票に不参加を表明した5市に撤回を促すハンガーストライキをした人物だ。

客席には80人ほどが詰めかけ、うち6割以上がシニアの「戦後世代」だ。

司会者が代表の元山さんに「仁士郎は、沖縄の大人に対する怒りを持っている。話しにくいかもしれないが」と水を向けた。マイクを握った元山さんは、少し言いにくそうに話し始めた。

「私たちが話しづらいのは、(大人から)『お前はわかっていない。もっと勉強しろ』と言われるからです。そうなると話したくもないし、何が勉強のゴールなのかもわからないから、考えたくない、触れたくなくなってしまう。みなさん(大人)も、勉強したり、現場に行ったりして自分の考えを踏んできた。私たちも、これから踏んでいくので、シャットアウトはしないでほしい」

誰もが感じていながら、口に出して言えなかったタブーに切り込み、さらに続けた。

「フェイクニュースを流しているのは50~60代の人たちだと言われています。私たちが悪いのか、むしろ上の世代の問題じゃないのかと疑問もある。私たちも話し合っていくので、みなさんも同世代の方々と話し合っていただければ」

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