沖縄の若者が「戦後世代」との間に見る高い壁 分断と歴史、葛藤の島でもがく若者たち(2)

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挑発的とも受け取れる発言は、とても偶然とは思えない。彼らが日ごろから県民投票をアピールする場で唱えていることがある。賛成でも反対でもいい。とにかく基地問題について話し合う機会にしてほしいと。少々刺激的ではあったが、世代間の分断を乗り越えるために、彼は火中の栗を拾ったのだと理解した。

だが、シニア世代も黙ってはいない。70歳くらいの男性からの質問だ。

「シンポジウムに不満と疑問を感じました。辺野古の問題について、パネラーの返答は曖昧に聞こえた。辺野古の問題はシンプル。0.6%の国土面積の沖縄に、70%(米軍専用施設での換算)の基地を押し付けて、世界一危険な普天間基地を即時撤去してほしいという要求に、『それなら代わりを出せ』という不条理な要求は通るはずがない。これが原点です」

やはり苦難の歴史を耐え忍んできた「戦後世代」の思いは深く、そして厳しい。

私はその3日後の1月29日、辺野古の座り込みの現場に行ってみた。年に何度か訪ねていて、日本人警備員や米兵に浴びせる市民グループの乱暴な言動も聞いたことがある。何とも言えない悲しい気持ちになったのを覚えている。それをもう一度、確かめに行こうと思ったのだ。

県警機動隊員に丁寧な言葉遣い

1日に3回、土砂を載せたダンプが辺野古のゲート前に到着する。その前に、年配のおじぃやおばぁが折り畳み式の椅子に座ってゲートをふさぐ。約40人。道路では集団でやってきたダンプが渋滞の列を作り始める。その数100台を超えるか。沖縄県警の機動隊員30人ほどが、ゲートの中から出てきて、座り込みの前に整列し始めたときだ。

マイクを握ったこの日のリーダーの声が拡声器を通して聞こえてきた。

「沖縄県警機動隊のみなさん、強制排除はなりません! 国の違法行為に目をつぶってはいけません! 通常業務に戻りましょう!」

何と機動隊員に対して敬語を使っている。以前なら命令口調の、もっと敵対的な言葉遣いだった。明らかにトーンが違う。

指揮官の合図とともに、機動隊員が端に座っている人から順番に肩を叩く。「立てますか?」。けっして威圧的ではないが、立とうとしない人を3~4人がかりで取り囲む。後ろから2人が両脇の下に手を通して持ち上げる。残る警察官は足を持って、脇に置かれた鉄製の檻(おり)のような囲いに運んでいく。

さっきまで笑顔で話していた、おじぃやおばぁの表情がこわばるが、泣き叫ぶでもなく、顔をしかめるでもない。ここで何年、座り込んできたのだろう。何度、強制排除されたのだろう。この島で生きてきて、年を重ねてきた老人が、この先幾ばくもない身体を抱えられ排除される光景は、何度見ても胸に迫ってくる。おばぁの顔に刻まれた深いしわが脳裏に焼き付く。

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