「保育園」がこんなにも建てられない根本理由

無理筋な条例や法令がいっぱい

2018年度にキッズデザイン賞を受賞した二子玉川の河川敷にある保育園。専属アーティストのアトリエやギャラリーを併設するという、アートに触れられる施設となっている(写真:日比野設計提供)

国内ではあまり知られていないが、日本の保育園など子ども向け施設の建築は世界でもトップレベルにある。第一人者である日比野設計は日本の各種建築その他の賞はもとより、アメリカ、中国などでの受賞も多く、海外の建築雑誌ではしばしば特集が組まれるほどだ。

視察も多く、中国、韓国などアジアのみならず、福祉先進国といわれるスウェーデンなど北欧からの視察も多い。実際、日比野設計が手がけた保育園や幼稚園、認定こども園等の園舎、園庭は伸びやかで豊か。こうした場所で育つ子どもたちがうらやましく思える。

保育施設は複数の法令規制を受ける

だが、その一方で日本では、入園する園を選ぶどころか、どこでもいいから入れたい、入れないという保育園不足が続いているのは周知の通り。都市部を中心にあの手この手で増やす努力が続けられているが、場所や人手など容易に解決できない問題もあり、不足は解消できていない。しかし、容易に解決でき、保育園増につながるはずなのに、一般には問題視されていない問題があることをご存じだろうか。それが建築をめぐる法令の齟齬や無知という問題だ。

建物に関する法律としては建築基準法が知られているが、実際には用途によってそれ以外の複数の法令の規制を受ける。特に保育施設は児童福祉法、バリアフリー法、都市計画法、さらに各自治体の条例等規制が多い。それにより、建築基準法では問題のない既存建築物が保育施設としては使えないということが多々あるのだ。

例えば東京都の場合、最も高いハードルになっているのは児童福祉法に都が上乗せした条例である。「建築基準法は2階建てまでの建物には2方向避難を求めていません。ところが東京都条例ではそれが100㎡以下の小規模保育所であっても非常口は2カ所、しかも原則10m離れたところになければいけないとしています」(建築再構企画・佐久間悠氏)。

佐久間氏に相談し、6件目でようやく条件に合う物件が見つかり、開園にこぎ着けたという保育園(写真:狐塚 勇介)

 都市部では地価が高いため、新築で保育園を作るのは自治体の事業や大手以外では難しい。どうしても既存建物を利用するしかないが、となると建築基準法以外の法を満たしている可能性は非常に低くなる。10m×10mが100㎡と考えると、そこに10m離れて2カ所の出入り口がある物件を探すことの難しさが推察できよう。しかも、東京都の規定によると出入り口が2カ所あっても避難経路が重なっている場合はダメ。2カ所それぞれに独立した避難経路がなくてはいけないことになっている。

次ページバリアフリー法も建築のハードルを高くしている
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