「保育園」がこんなにも建てられない根本理由

無理筋な条例や法令がいっぱい

近年、保育所建設に反対するケースで「事前に丁寧な説明をしておくべきだった」という言葉を聞くことがあるが、このスケジュールで作らざるをえないとしたら、「丁寧な説明」をする時間をつくるのは厳しい。地元の反発の一端はスケジュールにもあるのかもしれないのである。 

さらに、補助金利用の場合は前述の通り、3社の相見積もりが必要になることが多く、しかも届出を行う市区町村の入札参加資格があり、その自治体内に主要な事業所を置くことが求められるなどの要件も必要。設計の審査や補助金申請など書類を用意することも多く、もちろん、建物以外の要件、手配などもある。保育園開業はとんでもなく難事業なのだ。

民間サイドの知恵がレベルアップすれば

とはいえ、十数年前に比べれば縦割りや、不整合は整備されてきたと佐久間氏は言う。

「第二次安倍政権以降、問題が起きてから法整備までの時間が短くなっており、省庁連携も進んでいます。建築行政では既存ストック利用の推進、耐震化支援の充実など既存建物を利用しやすくする施策が打ち出されていますし、2018年の建築基準法改正では2019年6月から用途変更が必要な面積が100㎡から200㎡に広がります。こうした改正が保育園開業などの既存建物利用への道を開くことを期待しています」

法令などの改正に加え、もう1つ、期待できる点がある。佐久間氏は建築家でありながら「建物の法律家」と名乗っている。法令間の齟齬を解きほぐす、建物を法令に合わせた形に作り直すのが仕事で、同氏の手にかかるとこれまで使えなかった建物が使えるようになる。

佐久間氏以外にも、60年間違法建築だった建物を再生した再生建築研究所の神本豊秋氏など、これまでなかった仕事をする建築家が出てきている。もちろん、法令や行政を現状に即した形に変える必要はあるが、建物を使いこなす民間サイドの知恵がレベルアップすれば再生される建物も増える。

そして、場所さえ確保できれば、日本の建築家は細かい配慮のある、想像力を育むような保育園を作ってくれることだろう。「入れるならどこでも」から、「入れたい園に入れられる」時代へ。夢想と言われるかもしれないが、夢を掲げなければ現実は変わらない。法令、行政、建築家には頑張っていただきたい。

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