「保育園」がこんなにも建てられない根本理由 無理筋な条例や法令がいっぱい
建築基準法が1階、2階に2方向避難を求めていないのは、2階までなら窓から飛び降りても死ぬことまではなかろうという判断だ。子どもの場合、2階はまずいとしても1階なら窓からの避難、あるいは火災報知器や防火体制の充実、耐震性能向上など非常口不足を担保する安全策はありうるはずだ。
だが、行政の施策はゼロか100の二者択一しか認めていない。子どもを守るための法であることはわかるし、尊重すべきではあるが、建物ごとに異なる立地要件などに考慮したり、ケースバイケースの判断をすることはできないものだろうか。
建築を知らないがための要件も
また、多少緩和されたが、バリアフリー法も建物の要件を厳しくしている。2016年に児童福祉法が改正される前は、子どもを1人でも預かる施設にはバリアフリー法が適用となり、多目的トイレの設置やあらゆる段差の解消、2階以上にはエレベーターの設置などが要求されていた。
建物の一部を借りる場合でも共用部を含め、福祉施設までの経路すべてをバリアフリーにする必要があるというのだが、1室のテナントのために建物内、建物と公道間などの該当する部分すべての段差を解消してくれるオーナーがどれだけいるだろうか。100㎡以下の、特定の子どもだけが集まる保育所に、不特定多数の来訪を前提にした多目的トイレは必要だろうか。もちろん、利用者の親など関係者に車いす利用者がいる可能性は否定できないが、その可能性のために保育所自体を作らないという選択は妥当だろうか。
幸い、東京都、横浜市、川崎市では法改正後、100㎡以下の小規模保育所(3歳未満児を対象とした定員6人以上19人未満の保育施設)にはバリアフリー法は適用されなくなったものの、大阪市のように以前通りという自治体もある。
建築を知らないがための要件もある。例えば川崎市は既存の建物を改修して新しい認可保育園を作る場合、新耐震以外は不可としているが、耐震診断を受け、適切な補強をすれば安全は担保できる。特に木造はそれほど手間、費用をかけずに耐震補強ができるにもかかわらず、一切シャットアウトである。
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