東証1部社数半減に募る投資家の不満と不安 1部銘柄から外れれば「株価暴落」は必至に
パブリックコメント募集のタイミングも異例だ。時間をかけて懇談会で議論を重ね、懇談会がたたき台を作成したうえで、それをパブコメにかけるのが一般的な手順だ。しかし今回は、たたき台作成のためのパブコメ募集ともとれる一方で、すでに方針は決まっていて、パブコメは形式的に実施するだけという見方もできてしまう。
当事者である東証は、「何も決まっていないし、拙速に進めることも考えていない」という。一連の報道は、論点ペーパーの一部分を切り出した具体策だけが一人歩きしている状況にあるということなのだろう。
また、一部報道で「東証は3月末までに再編案をまとめる方針」と報じられていることについても、東証は「上場制度の見直しは多数の関係者に影響を及ぼすことになる。意見募集に寄せられたご意見の内容をじっくりと丁寧に検討し、関係者の皆様と議論を重ねていく」と述べるのみだ。
誰のための上場制度改革なのか
東証は市場統合から一定期間が経過し、落ち着いたところで議論を始めるだけというスタンスだが、市場関係者の間では「日銀陰謀説」が浮上している。日銀が購入するETFの対象銘柄に、ふさわしくない会社が入っているのはけしからんと言い出し、東証に圧力をかけたというのだ。陰謀説の信憑性はともかく、プレミアム市場の創設が取引所の価値を高めるという意見があるのは事実だ。
筆者は大手生損保や信託銀行など機関投資家10社に今回の市場構造改革に対する見解を聞いてみたが、「超長期で個別株に投資しているので市場区分を意識していない」(日本生命)、「株式は政策保有株が大半で影響が想定されない」(三井住友海上)という“無関心派”がいる一方、「プレミアム市場を新設し、ハードルを引き上げることで、企業にとってはガバナンス改革など、企業価値を向上させる取り組みをより加速させるインセンティブになる」(損保ジャパン日本興亜)とする声も聞かれた。
前出の細水氏は「コーポレートガバナンスなど上場会社の質の向上は個々の企業経営者、株主の不断の努力によりなされるものであり、そのような努力を促す環境を整備するのが東証の役割。それを怠り、場当たり的に時価総額だけで企業の『質』を線引きすれば、日本の上場制度の長期的な信頼性を損なう可能性が高い。実際、海外の政府系ファンドなど最終投資家の一部にも日本株への投資をためらうネガティブ要因と見る動きが出ている」と指摘する。
東証は1月31日でパブコメを締め切るが、いまも実施している関係者へのヒアリングを、2月以降も継続する考えだ。とはいえ、懇談会がパブコメの内容をもとに今後議論を進めるとみられ、声を上げなければ各種報道のとおりに市場が改変される可能性はゼロではない。
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