北方領土交渉のカギ握る日ソ共同宣言の本質 日ロ交渉はプーチンの思惑通りに進んでいる
北方領土問題に関する日本とロシアの首脳会談や外相会談が相次いでいるが、何が話し合われているのかさっぱりわからない。
例によって会談後の会見や説明は「真剣かつ率直なやりとりをした」とはいうものの、「交渉の具体的内容についてはお伝えできない」というばかりで、領土問題に関する具体的な説明は一切ない。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相らは「4島の主権はロシアにある」など強硬姿勢を示す発言をさまざまな機会に発信している。一昔前であればロシア側のこうした発言に対し、日本政府は即座に否定したり反発する見解を示していたものだが、いまはひたすら沈黙を守っている。この状況をどう見ればいいのか。日ロ双方の主張と論理をひもとき、今後を展望してみたい。
ロシアに4島を返す気はない
年末年始、プーチン大統領やラブロフ外相は内外のマスコミを対象に相次いで記者会見した。その内容を見るかぎり、北方領土の4島を日本に返す気はまったく感じられない。
ロシア側がもっとも強く打ち出しているのが、自分たちが4島を占拠していることの正当性だ。「南クリル(北方領土のロシアの呼称)の島々はすべてロシアに主権がある」「日ロに領土問題はない」「日本の主張は国連憲章の旧敵国条項(107条)に違反する」と主張し、「日本が国内法で島々を北方領土と呼んでいることは容認できない」とまで言っている。
その根拠として「国連憲章や第2次大戦終結に関する大量の文書」を挙げている。ソ連はかつて、対日参戦の見返りに千島列島の引き渡しを盛り込んだ「ヤルタ協定」や、日本が千島列島を放棄することを記載している「サンフランシスコ講和条約」を、正当化の根拠にしていた。しかし、ヤルタ協定は日本が関与しない米英ソの密約でしかなく、サンフランシスコ講和条約はソ連が反対して署名していない。さすがにプーチン政権はそれらを根拠として積極的に持ち出すことは控えているようだ。
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