「当然です。実はその3年前の会議で社長が話した内容と、ほぼ同じものでしたからね(笑)。過去の議事録を引っ張り出して、日付と場所と、少しだけ内容をカスタマイズしただけ。
だから1時間程度で書き終えたし、そもそも先輩たちが頭をひねり出したものをベースにしたから、労少なくして、いいものが出来た。プアなイノベーションより、優れたイミテーションですよ」(佐々木氏)
ポジティブに手を抜くことは、仕事を早めるだけではなく、仕事の質を高めることにもなるというわけだ。
顔の表情やしぐさなど、視覚的な情報が増える対面でのコミュニケーション。営業でも打ち合わせでも、直接会うメリットは多くの人が理解し、実感しているはずだ。
一方で、対面で会う、となれば、アポとりの手間が増えるし、社外の相手なら移動の時間に相当のロスが生まれる。結果、やるべき仕事の時間が奪われ、ストレスにつながることも多々あるわけだ。そこで、対人コミュニケーションにおいては「本当に直接会うべき案件か否か。メールや電話で済むのではないか」を動く前に考えるのが得策だ。
慣習で続けている余分な仕事はないか
「私が東レで漁網の営業課長になった頃、営業パーソンは月1回、得意先である地方のメーカーに出張訪問するという“伝統”がありました。漁網メーカーはたいてい地方の海外沿いにあるから、2泊3日が当たり前で、移動時間ばかりかかる出張になっていた。
しかしよく聞くと、出張で話す内容は『最近どうですか?』『追加注文は?』といった程度。大きな売り上げと利益を占めていたので“誠意を見せる”という狙いもあったのでしょうが、それって電話一本で済む話でしょう」(佐々木氏)
そこで佐々木氏は、営業課に「出張の原則禁止」を明言。そのかわり、毎週月曜日の朝8時30分に電話して「最近どうですか?」「追加注文はありますか?」と出張して対面するときと同じ内容の会話をさせることにした。
「対面じゃないと誠実じゃないととられるのでは……」。現場の営業パーソンは最初そう思ったが、反応はまったく逆だったそうだ。毎週月曜日の朝になると「そろそろあいつから電話がかかってくる頃。アレとコレが足りないから頼もう」と、得意先が準備して待っているようになったのだ。
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