大切な人の最期を「看取る人」に必要な心掛け 亡くなる約3カ月前から起きる意外な出来事
家族も、具合が悪くなったときに点滴をして回復した、という経験があったりするため、点滴を打つと言われれば喜びます。けれども、死につつある人にとっての点滴は、むくみや痰の増加を引き起こしてしまうことがあります。
もちろん、がんの末期で痛みがひどい場合などには、点滴は絶対に必要です。痛み止めを入れなければならないからです。けれども、そのような必要性がない場合には、その点滴、あるいは治療や入院が本当に必要なのか、それをしたら本人がどう変わるのかを、医師や看護師によく聞いてから判断したほうがいいでしょう。自分たちの希望のために、死にゆく人に負担を強いるのは、酷だと思うのです。
別の世界に行きつつあることを理解できない
亡くなる1カ月前頃になると、幻覚を見て不思議なことを言うようになります。多いのは〝お迎え現象〟と呼ばれるものですが、なかには「虫がいる!」と言って騒いだりする人もいます。
最初は本当に虫がいるのだと思い、「どこ?」と聞くのですが、「そこ!」と指差すあたりを見ても、何もいません。逃げたのかと思っていると、また「虫がいる!」と言います。しかし、何もいません。そんなことを何度か繰り返すうちに、家族はそれが幻覚だと気づきます。そして、「虫なんていないじゃない」「いないのに、いると思っているだけだから」と躍起になって否定します。
しばらくは「いる」「いない」の応酬ですが、何日か経つうちに、本人は何も言わなくなります。「やっとわかったんだ」と家族はホッとしますが、そうではありません。言っても言っても否定されるので、言うのをやめただけ。本人には相変わらず虫が見えているのです。
虫がいてイヤで仕方がないのに、誰も助けてくれないとしたら、どうでしょうか? つらくはないでしょうか。
このようなときは、相手の世界を否定せず、こちらが相手の世界に入る必要があります。「虫がいる!」と言われたら、「じゃあ、退治しよう」と答えて、追い払ったり殺虫剤を撒いたりする。あるいは、「寒くなったから、そろそろ虫もいなくなるよ」と言う。そのようにして、相手の世界の中で安心できるようにすることが大事です。