【産業天気図・住宅/マンション】引き続き「雨」模様、販売不振強まり値下げ後の資金調達力が明暗分ける状況に

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

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住宅・マンション業界の天気は2008年度後半は「雨」、09年度前半も「雨」が止みそうにない。
 
 現在、マンション販売は不況の真っ只中にある。不動産経済研究所調べの契約戸数を見ると、1999年から06年までが6万戸超。これが08年は92年以来、16年ぶりの3万戸割れになる可能性が濃厚だ。理由は販売価格の高騰。現在販売されているマンションは06年以降に用地取得した物件が多く、その後の用地や建築費の高騰を織り込んだ販売価格を付けざるを得なかった。08年に入ると購買層は完全に様子見を決め込んだ状態となり、そこへサブプライムショックが到来。景気も本格的な後退局面に入る一方で、銀行の融資姿勢も一段と厳しくなり、事態は一気に深刻度を増した。
 
 今年に入って不動産関連の破綻による上場廃止は10社を超えるが、このうちマンション分譲を手掛けていたのはアーバンコーポレーションから始まって、直近ではモリモトまで8社。ただ、ほとんどが流動化事業を兼営しており、主にそちらの面の資金繰りがつかずに破綻したケースが多い。

ところが、流動化事業向けの資金融資が止まった現在、今度はマンション向けの融資にも懸念が強まっている。このため、オフィス賃貸部門を持つ大手不動産系以外のマンションデベロッパーは、損切り覚悟で物件を売却した場合、次の資金調達のメドがたたない企業が出る可能性もある。さらに、土地価格や販売価格が下落していることも響き、デベロッパー各社は棚卸資産評価損の計上を余儀なくされ、業績面の減額修正も相次いでいる。
 
 大京<8840>は4~9月期で323億円の棚卸資産評価損を計上し、価格引下げによる在庫圧縮に乗り出したが、その一方、今09年3月期業績予想を大幅赤字に修正した。このため希望退職やオリックスからの第三者割当増資(100億円)などにも踏み切っている。また、コスモスイニシア<8844>も棚卸資産評価損38億円を計上。残存するA種優先株(65億円)の償還時期を来10年3月期以降に延期した。

また、中堅のセントラル総合開発<3238>は54億円を計上し、今期は一転、大幅営業赤字となる見込みだ。09年4月入社の内定者取り消しで話題になった日本綜合地所<8878>もタイトな資金繰りから、11月5日に主要取引先である4行から約168億円の資金調達を行なったが、一方で来期までの用地仕入れの抑制や11年3月期までの1000億円以上の有利子負債を圧縮を表明している。また、戸建て住宅の東栄住宅<8875>も11月に発表した第3四半期決算で、28億円を計上し、こちらも今09年1月期業績予想を大幅赤字に修正した。
 
 また、資金繰り面で懸念がないとされる三菱地所<8802>、三井不動産<8801>、住友不動産<8830>、東急不動産<8815>、野村不動産ホールディングス<3231>の大手不動産5社も予想以上のマンション部門の減速から、5社すべてが通期業績の減額に追い込まれている。
 
 ただ住宅・マンション業界も暗い話ばかりではない。ここへきて土地価格や建築費の低下が始まっており、年明け以降、新規に購入するには環境が整いつつある。このため、資金調達力のある企業は用地の新規購入を増やすことで、約1年から1年半後の竣工時には、市場ニーズにあった販売価格でマンションを提供するチャンスをつかむことも出来そうだ。
(日暮 良一)

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