放映権ビジネスの最前線に飛び込んだ日本人 岡部恭英 テレビ放映権セールスマネジャー
インターンのため100人作戦を敢行
04年、岡部はケンブリッジの大学院に入学し、サッカー部に入部した。ストライカーとしてチーム最多得点を決め、同大学クイーンズ校に大学院リーグの優勝をもたらした。女王陛下が直々に校舎を訪れ、チームの優勝を祝ってくれたという。岡部は日本人留学生としては珍しく、クラスでも目立つ存在だった。
MBAにはインターンシップ制度もあり、岡部は欧州のクラブで働いてみたいと考えた。ただ欧州のクラブに直接売り込んでも、受け入れてもらうのは難しい。岡部もイギリスの数クラブに電話したが、あえなく玉砕した。
ここで岡部の“100人魂”に火がついた。イギリス、スペイン、ドイツなどサッカー強国のクラブや協会、代理店などに次々と電話をかけた。イタリアに飛んだ際はACミラン、ユベントスといった名門クラブの門をたたいた。そして関係者と出会うと、「知り合いを紹介してください」と頼み込み、意中の人物にはほぼ接触することができたという。
だが、採用となると簡単にはいかない。岡部は断られ続けているうちに一ついい方法を思いついた。
「MBAの修了論文のためにインタビューさせてくださいと言うと、簡単にアポイントが取れたんです。取材時間が30分だとしたら、それはあくまでも前座の時間。インタビュー後に『僕はこんな勉強をしていて、あなたのクラブにこんな貢献ができます』とプレゼンテーションを始める。相手が身を乗り出して聞いてきたら、こっちのものです」
岡部は再び約100人のサッカー関係者と会い、最終的にはエバートン(イギリス)とインテル、ユベントス(ともにイタリア)からインターンの承諾を取り付けた。「クラブビジネスではイギリスが最先端」と考え、エバートンを選択する。
「MBAの同期たちは、『おまえほどドリームジョブを手にしたやつはいない』と言いますが、僕は必ずこう言い返します。『俺ほど断られたやつもいない』と。100の『NO』をもらった経験は僕の勲章です」
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