放映権ビジネスの最前線に飛び込んだ日本人 岡部恭英 テレビ放映権セールスマネジャー
渡英前、岡部には日本でやっておきたいことがあった。それは「サッカー関係者100人に会ってアドバイスをもらう」という試みである。
「退路を絶ったのだから、それくらいはしないと。まずは大学サッカー部時代のつてを頼り、誰かと会えたら、最後に『知り合いを紹介してください』と必ず言うんです。そうやって芋づる式にサッカー関係者との約束を取り付けていきました」
このとき岡部には、強烈に印象に残った言葉が三つあった。
一つは大手広告代理店の社員としてFIFAと大きなコネクションを築いた人物の言葉である。
「この世界は、ギブ・アンド・テイクなんて存在しない。ギブ・アンド・ギブだ。ギブ、ギブ、ギブで攻めまくれ」
二つ目は、FIFAのテレビ放映権部門で働く日本人のアドバイス。
「自分を引っ張ってくれる人間を3人つくりなさい。1人じゃダメだ。その人が脱落したら、出世への階段が途切れてしまう」
最も影響を受けたのは、日本サッカー協会の小倉純二副会長の言葉だった。小倉は古河電工の社員時代から協会を支え、現在はFIFAの理事も務める国際派である。彼は自らの経験を基に、初対面の若者にこうアドバイスした。
「大事なのは四つ。人脈、語学力、放映権、欧州サッカー文化の深さを知ることだ。特に放映権は、ますます重要になってくる。ここをしっかりと押さえなさい」
後に岡部がTEAMに入社したのも、この言葉が頭の片隅に残っていたからかもしれない。
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