放映権ビジネスの最前線に飛び込んだ日本人 岡部恭英 テレビ放映権セールスマネジャー
リーグにまつわるあらゆる業務を代行
06年、岡部はTEAMの一員になった。TEAMは1992年、UEFAとともに欧州チャンピオンズリーグを立ち上げた会社である。欧州にはもともと各国の優勝チームが出場する「チャンピオンズカップ」という大会があったが、テレビ放映権は各クラブが別々に所有し、商業的にはまだまだ改善の余地があった。そこで92年、現TEAM社長のヘンペルと副社長のレンツとが、UEFAのヨハンソン会長に、「こんな仕組みにすれば大きな利益が出る」と直談判したのが、TEAM設立のきっかけだった。
テレビ放映権が一括管理されるようになると、TEAMは公式スポンサーを募り、大会用の新しいロゴも作成した。UEFAのチャンピオンズリーグによる収入は初年度約56億円だったが、10年後には約900億円にまで膨れ上がった。現在の収入は1000億円を超える。
TEAMはチャンピオンズリーグの放映権だけでなく、試合会場の運営から観客のマーケティングまで、リーグにまつわるあらゆる業務を代行する。興行全体にかかわるところが、同業の放映権会社とは異なる点だ。岡部はそこで現在、アジア・オセアニア地区でのテレビ放映権販売や、チャンピオンズリーグの市場分析、プロモーションを担当する。TEAMでは社員はつねに高いプロ意識を要求されるという。
「こんなに集中して働いたことは人生で初めて。チャンピオンズリーグは世界中に中継されるため、絶対にミスが許されない。わが社ではどんなに小さな業務にも、プランB、Cと代案を持つことが要求される。
たとえば社内の会議でプレゼンテーションをする場合、TEAMの人間は、プロジェクターのケーブルをガムテープで張り付けて、誰かがつまずいてもコンセントが抜けないようにする。普通ならコンセントにまで気を使わないでしょう。この会社に来てから、準備不足だと感じる人には出会ったことがない」
その対価として、給料は業界平均と比べても高いようだ。だからこそサッカー界の内外から優秀な人材を引き付けることができる。
「直属のボスは元弁護士です。MBAを取得して投資銀行で働いてから、TEAMに入社しました。営業マンにとって質問力はすごく大事ですが、この上司は商品を売るために役立つ情報を、何げない会話から引き出すことができる。日々、レベルの高い人間とともに、最高の疲労度と充実感を味わえています」
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