大阪たこ焼き「くれおーる」が紡ぐ商売の本質 タコにこだわらず「TAKOYAKI」世界進出も
「たこ焼きは冷めたらおいしくない食べ物という認識があったんですね。『冷めてもおいしいたこ焼き』があれば、絶対売れると思ったのがウチのスタートです」(幸裕氏)
商機を見いだした同社は、ターミナル駅である京橋に移転し、3坪のたこ焼き屋台を開店する。ここに、地域住民だけではなく大手企業の役員たちも足しげく通ったという。今でこそ、故・星野仙一氏や小泉純一郎元首相、建築家の安藤忠雄氏、デザイナーのコシノジュンコ氏といった著名人との交流もあるが、京橋での“ある出会い”がこれらをつないでいった。
「うちのオカンは人の懐に入るのがうまいというか、サラッと誰とでも仲良くなれるんです。
京橋のお店では、ある一流企業の部長さんが常連で、オカンに『おいしいから会社でも食べたいわ』と冗談ぽく言われて。翌日オカンが大量のたこ焼きとスイカを2つ持って、その企業の本社まで行ったんですよ。
社交辞令で『行くわ』と言って、行かない人が大半だと思うんですが、うちのオカンは躊躇なく行ける人なんですよ。それで、その企業さんがヒルトンホテルでパーティーをする時に、たこ焼きを焼いてくれとオファーをしてくれた。
ホテル側から火器を扱うから『前例がない』とNGが出たんですが、部長さんが『それなら別のホテルでやるから、僕は今後あなたのホテルを使いません』と言い張り、パーティーが開催できた」(幸裕氏)
人との出会いやオカンの人間力が成長の源泉
この出来事が転機となり、以降はヒルトンホテルだけでなく、帝国ホテルなどの高級ホテルから逆オファーを受けるようになった。そういった人との出会いやオカンの人間力が、くれおーるの成長の源泉にある、と幸裕氏は続ける。
「安藤忠雄先生も、知人の紹介で連絡が来るようになって、パーティーでたこ焼きをしているうちにオカンが勝手に仲良くなった(笑)。今でもお付き合いが続いています。
今の時代、マーケティング、ITといった先端技術を駆使することが当たり前ですが、ウチはそういうオカンの泥臭さや、熱意といった人間力で勝負してきた。
今はそれができる人って、少ないと思います。だからこそ、ウチは逆境にも負けない強さがあるんだ、という強い自負があるんです」(幸裕氏)
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