「ナチュラル系」はいかにして生まれたか
――そうしたファッションは、『リンネル』創刊前から存在していたのでしょうか。
「ナチュラル系」という単語はなかったと思いますが、スタイルとしては存在していて、それを作るアパレルさんや、デザイナーさんはいらっしゃいました。ただ、「ナチュラル系」という言葉が与えられるまで、それが点在しているような状態だったのですね。それがようやく、「あ、これもそうだね。気づいたらこれもナチュラル系だね」と、くくられていったのだと思います。
――過去を振り返れば、2000年代半ばに、スローライフブーム、ロハスブームがありましたね。ナチュラル系は、その流れをくんでいるのでしょうか。
確かにブームがありました。『Ku:nel(クウネル)』や『天然生活』といった雑誌が創刊された頃です。当時は特に、食と住という分野で、スローライフという動きが沸き起こったものでした。景気があまりよくない時期が続いたからか、今まであまり見てこなかった家の中とか、自分の時間の過ごし方とか、身近な友人とか、そういうところに目がいくようになったと感じましたね。
そうした後に、だんだんと、その暮らしに沿うような形で装いも変えていきたいなという方が出てきたのだと思います。
独特の進化を遂げるリンネル文化
――身近なところを丁寧に、という感じなのだと思いますが、『リンネル』は使っている紙の質も、普通の雑誌とは違いますよね。
そうなんです。表紙も中も、紙にはすごくこだわっています。手触りといったぱっと目に見えないところも、大事にしています。
――知る人ぞ知る、かもしれませんが、『リンネル』の付録のクオリティは、おまけのレベルを超越しています。丹念に作り込まれているという印象なのですが、そうとうに時間をかけているのでしょうか。
旬のものを作りたいので、製作期間がすごく長いわけではないのです。でも、確かに作り込みは細かいです。
トートバックなら、長財布を入れて、携帯を入れて、デジカメまで入れたりしてチェックします。重さでバックがたわんで、形が格好悪くならないようになど、それはしつこくしつこく、やっています。
雑誌そのものコンセプトや、読者の根本にある考え方もそうであるように、せっかく自分の手元に来たものなのだから、付録だって長く使えたほうがいい。実際私も、3年前の創刊号の付録のトートバックを今でも使っています。
――読者向けのイベントも、多くのファッション誌のものと少し違っていますよね。
これまで2回、『リンネル文化祭』というイベントを行いました。フリーマーケットをやったり、キャンドルや器を作る職人さんを呼んで話を聞いたりという催しなのですが、タレントを呼んだりすることはなく、純粋にカルチャーを楽しむ文化祭といった感じです。
誌面でも、インタビューのような記事モノを、けっこう入れています。自分が高校生の頃に読んでいた雑誌って、すごくいろんなことが載っていました。ファッションだけじゃなくて、映画とか音楽とか、外国のこととか。当時、雑誌を読んでいた頃の感動が、今も残っています。
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