トレンドと一緒に廃れないエンジニアの条件 キャリアチェンジで生き残るのに必要な視点

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僕は学生向けの講義で、「明日、農家に転身しても役立つことからやるといい」という話をしています。例えば、「物事をいかに抽象化してモデル化するか」「複雑になり過ぎた設計をどうスリムにするか」を考えられる力を生かせる領域は、システム設計やプログラミングに限りません。他の仕事でも役立ちますから、極端な話、エンジニアという職種がなくなったとしても生きていける。

個別の事象を“個”として見ていると、人生の難易度は上がる気がします。抽象性を上げる視点を持てば、関係がなさそうに見える物事にも共通点はあるもの。僕はプログラミングと工作が好きな子どもでしたが、どちらも「考えたことが技術を通じて形になる」という意味では同じです。料理や音楽、写真、最近では板金も趣味でやっていますが、僕にとって根底にあるものは全て同じなんです。

「他の仕事でも役立つことから学ぶべき」と語る深津さん(写真:竹井俊晴)

そう考えていけば、そこで得たノウハウは仕事にもフィードバックできるし、複数の領域を横断し、掛け算できれば希少性は上がります。1万人に1人のエンジニアになるのは難易度が高いけれど、「10人に1人」なら不可能じゃない。

その上で、音楽についても10人に1人という存在になれば、100人に1人しかいない「音楽ができるエンジニア」になれます。加えてゲームの実装が10人に1人のレベルでできたなら、「ゲームと音楽をインタラクションにプログラミングできる」という1000人に1人のエンジニアになれますし、さらに10人に1人のディレクション能力を身につけたなら、「1万人に1人」の逸材になれるわけです。

一つの領域を極めようとするのは大変ですが、2〜3つの分野で10人に1人の能力を持つだけで、極めて希少性の高い人材になれる。そう考えれば、人生はもっと楽になると思います。

「予測できるもの」と「予測が無駄なもの」を分ける

物事の行方を予測する時に、「予測できるもの」と「予測するだけ無駄なもの」があります。そこを見極め、予測できるものにヤマを張る、無駄なものは確率上の問題として処理するなど、切り分けることが重要です。

例えば、「木の葉がどの座標にいつ落ちるか」を厳密に予測するのは無理ですが、「秋になれば木の葉は木の下に落ちる」という予測はできます。つまり、いつどこにザルをおけば、葉っぱがたくさん入るかは分かる。個々のテクノロジーも同様で、点として見れば選択肢が多過ぎて、先の予測は困難です。でも、「大きな流れがどこに向かっているのか」や「この選択肢には未来がない」ということは、ある程度判断できます。

1つ例を挙げると、僕はサーバのセットアップや構築は、長い目で見れば自動化されると予測しています。すでにAmazonに要件を伝えれば設定してくれるわけで、大きな方向性で考えれば、そこに人生を賭けるのはリスキーだと判断できる。

次ページ全体へと視点を切り替えることで見える大局
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