トレンドと一緒に廃れないエンジニアの条件 キャリアチェンジで生き残るのに必要な視点

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そうしてFlashクリエイターとして仕事を始めた約3年後、iPhoneが登場しました。プロダクトデザインと、Flashのようなインタラクションやアニメーションのキャッチーさ、そしてテクノロジーが交錯している状態が面白かったんですよ。「今後の生活がどう変わっていくのか」に興味を持って、カメラアプリを開発しました。

深津貴之(ふかつ たかゆき)/株式会社THE GUILD代表。株式会社ピースオブケイクCXO。 大学で都市情報デザインを学んだ後、ロンドンの芸術大学、セントラル・セント・マーチンズに留学し、2年間プロダクトデザインを学ぶ。2005年に帰国し、株式会社thaに入社。2009年に株式会社Art & Mobileを設立し、独立。以降は、活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、2013年THE GUILDを設立。2017年、株式会社ピースオブケイクのCXO(Chief eXperience Officer)に就任。

アプリのUI設計に興味を持ったのは、「総合格闘技的に自分のスキルセットが全部使える場所だ」と感じたから。当時のエンジニアはテクノロジーだけで勝負をしていましたが、僕は仕事で広告キャンペーンのコンテンツ制作などを経験する中、「キャッチーな見せ方で商品が売れる」とか「リピーターになる設計やバズらせる設計をすると良さそうだ」といった、時代に先行した元ネタを持っていたわけです。結果的に、カメラアプリは150万本も売れる大ヒットとなりました。

この後フリーランスを経て、フリー同士で寄り合う組織『THE GUILD』を立ち上げましたが、設立の背景にあるのはフリーランス時代の課題意識です。フリーランスの立場では、サービスの根本の設計や思想、方向性に口を出すことが難しい。上流から携われるスキームをつくろうと考えた結果、「イケてるフリーランスの技術者を集約してスケールメリットを出そう」という発想が生まれました。

やがて、「実装はしなくていいからアドバイザリーだけでも手伝ってほしい」という案件がくるようになり、UI設計やUXデザインをやったり、スタートアップをお手伝いしたりといった、現在の活動につながっています。

繰り返しになりますが、僕は狙ってキャリアチェンジをしてきたわけではありません。生き残れているのはあくまでも結果論。そういう前提ではありますが、時代の変化に沿ったキャリアチェンジのポイントは2つあると思っています。

抽象的で応用できるスキルセットを得る

キャリアチェンジについて悩むエンジニアは、「テクノロジートレンドに依存したスキルセットを増やそう」という意識が強過ぎることが問題な気がします。トレンドに依存しないスキルを増やすという考えを持つとシンプルです。

その上で、得るべきスキルセットを考えるとき、まずは「抽象的かつ応用できるもの」の優先順位を上げること。特定の言語に対する知識は、趣味や興味、常識の範囲内で十分です。個別の技術を極めようとする人もいますが、flashが使われなくなったことからも分かる通り、スキルの置き換えは可能ですから。

次ページ「事象を“個”として見ると、人生の難易度は上がる」
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