SIM戦国時代が到来、勝者は誰なのか 「SIMフリー」アイフォーンでSIMカード戦いが過熱

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これに対抗したのが、IIJだ。6月から月945円で500メガバイト分の高速通信を利用できるプランを開始した。さらに10月には、月2ギガバイト利用できるプランを1974円から1596円へと値下げしている。

データ通信専用のMVNOが多い中、音声通話を売りにしているのが、「bモバイル」ブランドで展開する日本通信だ。同社は、月1560円で通話と200キロビットの速度でデータ通信ができる「スマホ電話SIM フリーData」を11月に発売した。「本丸である音声通話を避けてサービスを提供するわけにはいかない。新商品は量販店からの引き合いも予想以上だ」(福田尚久副社長)。

コストを抑えるために、ネット経由でSIMカードを販売するMVNOがほとんどだ。そうした中で、日本通信は、ネット通販に加え、イオンやヨドバシカメラと組んで、実店舗での販売にも力を注ぐ。IIJもイオンやビックカメラで販売しており、「自社のWebよりも店頭でSIMカードを購入するユーザーが圧倒的に多い」(IIJの神田恭治サービス戦略課長)という。

ドコモとの微妙な関係

MVNOの大半は、携帯電話最大手であるNTTドコモのネットワークを借りており、ドコモのスマホユーザーであれば、格安SIMを端末に差すだけで利用できる。つながるエリアの広さなどもドコモと変わらない。低価格で高速通信ができる格安SIMが増えれば増えるほど、携帯電話会社の料金の高さが際立つことになる。

ただ、ドコモの加藤薫社長は「(用途に応じた)すみ分けはできる」と話す。ドコモのネットワークを利用したMVNOの契約数は、ドコモの契約数としてカウントされている。敵とも味方ともいいにくい、微妙な存在だ。

右肩上がりのMVNO市場だが、課題もある。MVNOの多くがドコモのネットワークを使っているため、通信規格の違うauの端末は使えず、ソフトバンクの端末で使うには、SIMロックを3150円払って解除する必要がある。ただし、アイフォーンは対象外だ。

SIMフリーの端末が高いのもネック。「アイフォーン5s」のSIMフリーの価格は16ギガバイトモデルで7万1800円。携帯電話会社から購入した場合は、2年間の利用を前提に端末の代金を月々の料金から割り引く制度があるが、SIMフリー版にはそれがない。端末代と通信料金を合わせた2年間の費用は安くなるが、通話できない、高速通信できる量が少ないといった制限がある中で、消費者がどれだけ魅力を感じるのか、疑問が残る。

MVNO各社にとっては、参入企業の増加による競争の激化も、頭痛の種だ。12月3日には、NECビッグローブは月980円で高速通信が1ギガバイト分使えるプランを発表。古関義幸社長は「これ以上の低価格化は難しい」と言う。

格安SIMカードは、知る人ぞ知るニッチなサービスで終わるのか。それとも業界を席巻する一大サービスになるのか。これからが本当の勝負となりそうだ。

週刊東洋経済12月14日発売号

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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