年収2000万円!謎めいた「キーエンス」の実態 「40代で墓が建つ」ほど理不尽な激務なのか
合理性の追求は営業に限らず、会社組織として浸透しているようだ。キーエンスは現名誉会長の滝崎武光氏が1972年に設立した。滝崎氏は同社株の7.7%を持つ大株主だが、オーナー色は思った以上に薄い。同社の採用サイトには社員の親類縁者は応募できないと明記されている。実際、役員名簿には滝崎氏の親類縁者は見当たらない。
合理性の塊ともいえる組織で、その点では「フェアな会社」(B氏)なのだ。B氏はかつて、転職が盛んな海外で人材のつなぎ止めができていないと指摘されたことがあった。この時、B氏は海外の転職市場のデータを示して反論。転職が前提の海外に合わせた社員教育や人事制度の確立を提案し、本社を納得させたという。
「上司や役員などの誰が言ったのかではなく、何を言ったのかが重視される」(B氏)。根拠に基づいて論理的に説明できれば、新卒1年目の社員にも耳を傾ける社風という。「上司におもねることや派閥を形成するようなことはなく、経営陣を含め上司に対しても基本的にはさん付けで呼び合っていた」(同)。
元社員は転職市場で高い評価
業務の合理性を追求する社員が育つため、転職市場でもキーエンス社員は人気の的だ。6年で退社し、現在は自動車メーカーに勤める元社員は「キーエンスに在籍したというだけで、大手製造業数社から誘いをもらった」と転職時を振り返る。海外でもアメリカを中心に「キーエンスユニバーシティ(大学)」とも評され、人材輩出企業として一目置かれている。
ネット上などでは、キーエンスを辞めた後に起業する例が多いとされるが、「300人くらいのOB会で起業者数は指で数えるほどしかいなかった」(A氏)。あえて起業するよりも、自らが働きたい会社でキーエンスの経験を生かす人が多いようだ。
ただ、こうした実態はなかなか表に出てこない。情報開示が極端に少ないからだ。ノウハウ流出の防止やBtoB事業からくる制約などが理由とされるが、その姿勢が秘密めいた企業イメージにつながっている。また、同社はこれまで頻繁に決算期変更を行っているが(「キーエンス、高収益企業が決算期を変えるワケ」)、それも上場企業としては異例の措置といえる。
「もう少し会社の状況や働き方を公開してもいいのに」(OBの1人)。平均年収2000万円超、営業利益率50%超は徹底的な合理性の追求の証しだろう。が、その異様とも言える数字に対する説明がもっとあれば、ひどい噂も立たないはずだ。
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