「熱帯感染症薬」開発で日本が果たすべき役割 退任前にファンドのキーマンが提言
日本だけ安泰という考えは通用しない
――GHITはNTDsに焦点を当ててきたが、なぜNTDsなのか。
NTDsはWHO(世界保健機関)が「制圧しなければならない熱帯病」として指定している20の熱帯感染症で、世界人口70数億人のうち10億人以上が罹患しているといわれている。リンパ性フィラリア、アフリカ眠り病、一時、日本でも騒ぎとなったデング熱などが含まれる。日本では制圧された狂犬病も、アジアなどではまだまだ感染リスクが高い。こういった疾患の治療薬を開発して必要な人々に届けることは、豊かな先進国の果たすべき役割だ。
また、グローバル化が進む中で、自国だけは安泰であるという考え方は通用しなくなっている。
――これまでの成果をどうみているか。
2017年6月に2億ドルの調達に成功し、現時点で総額140億円超を助成している。助成案件77件のうち8件が治験に入り、数年のうちに具体的な成果が出るところまできた。
治験中の8件は、マラリア3件、結核が2件、NTDs3件。このうちNTDsの1つ住血吸虫治療薬(アステラス、メルク、スイス熱帯公衆衛生研究所などが共同開発)は治験3相に入る。富士フイルムとFIND(スイスの非営利機関)が共同開発している結核の迅速診断キットは、CEマーク(EUの製品基準適合マーク)取得へ準備を進めている。
ファウンダーがいなくても、組織として持続性のある体制を作り上げることができるようになっていると思う。私自身の任期は2019年3月までだが、今、理事会で選定中の次のCEOが慣れるまでは見届けるつもりだ。
2018年6月にはファウンダーの1人、黒川清先生(東京大学名誉教授)が理事会長を退任されたが、元WHO事務局長補として熱帯病対策に取り組んでこられた中谷比呂樹先生を新会長に迎え、スムーズに移行できた。次期CEOもGHITの理念に深く共感し、日本の文化に対する理解とグローバルな視点のどちらも備えている人でなければならない。
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