「JKビジネス」にからめとられる少女らの現状 村木厚子さんが拘置所で見た日本の課題
「ひろめる」は、少女たちの実情を社会に広める活動です。また、こうした支援があることを、少女たちに知らせる活動でもあります。
少女たちが家出したり、援助交際に走ったりしたというと、それは彼女たちが勝手にやっていることで自己責任だとか、家庭の問題だ、親の責任だという声が多く聞かれます。でも、自己責任というには若すぎる年齢の少女たちです。家庭内暴力や、学校での陰湿ないじめなど、本人だけの責任とはいえないところもあります。そこに性的なものが絡んでいれば、外に相談するのはなおさら難しくなる。そんな少女たちの実態を、シンポジウムや広報活動を通じて広めています。
「まなぶ」は、彼女たちの実態を学び、信頼される大人になるための活動です。研修会を連続して行っています。「若草プロジェクト支援マニュアル」も作っています。支援したい人向けのハンドブックで、少女たちの現状や現行の支援制度、支援の実例や解説などを載せています。彼女たちの心情はどのようなものか、どう理解を深めたらよいのかなどについて、児童養護や婦人保護の施設、警察、学校、生活困窮者支援に関わる人たちによる解説も載せています。
緊急避難先「若草ハウス」を都内に作った理由
既存の支援団体には、20代や30代くらいの若い支援者も多くいます。感心したのは、少女たちと年齢が近いせいか、少女たちへのアプローチの仕方がとても上手なこと。何に困っているのか、何に悩んでいるのかを巧みに聞き出して、悪徳商法や性風俗に利用されないように支援する。「ピアサポート」がうまくいっています。
少女たちから信頼され、声をかけられる大人をたくさん増やしたい。そう思って、始めた連続研修会はすでに7回を数えます。2017年度は相談受付件数が1000件を超え、直接会って支援が必要とされたケースも8件ありました。
「若草ハウス」を作る決断もしました。若草プロジェクトの活動実績から見て、ちょっと早すぎるかと思いましたが、手頃な土地が見つかり、建築できるチャンスがあったため、「背伸びしても始めてしまおう!」と、メンバーで決めたのです。場所は東京都内で、2階には少女たちが生活できる場所、1階には一時避難所のように一晩か二晩、彼女たちが安心して心も身体も休めることができる場所を作りました。
「若草プロジェクト」は大学とも連携していて、いくつかの大学とは研究・調査に関する情報交換などを行っています。企業とのコラボレーションにも力を入れています。自社製品を提供してくれる企業と少女たちの支援者をつなげることを始めました。まずユニクロを展開するファーストリテイリングと連携して、洋服や肌着の寄付を開始しています。
自信をなくして閉じこもっている少女たちや自立のために就職活動を始める子たちに向けて、洋服のコーディネートとメークアップをするファッションイベントも始まりました。「服の力」って大きい。自信なさげに参加していた子が、似合う服を選んでもらってお化粧してもらうと、みるみるうちに表情が変わって、自信を取り戻していく。服だけに限らず、企業がこの分野でできることはまだまだたくさんあるはずです。
少女たちを通して、社会のさまざまな歪みが見えてきます。薬物依存の背景を探っていくと、性暴力から逃げ込むための薬だったり、無理に依存症にさせられた結果の薬だったりします。犯罪者というよりも、「被害者」と呼んだほうがふさわしいのではないかと感じるときもあります。こうした現実に目を背けない大人でありたい。そう考えています。
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