怒濤の勢いで浸透、中国「スマホ決済」の実態 現金を使いたい短期滞在外国人にはとまどい
露店や屋台でのやり取りでさえ、店員と顧客がスマホでQRコードを読み合って決済している中国の人々。現金で支払うのは、デジタルデバイスを使いこなせない高齢者か外国人くらいのもので、利用者比で見たら「現金で支払う人」は1%いるかいないかだろう。
現金流通が少なくなったことで、よい面がいくつか生まれている。たとえば、公共バスの運行会社では「金銭のカウント担当部署」を閉鎖し、別の運行管理部門に安全運転対策要員として配置転換した、なんてエピソードも伝わってくる。また、深夜のコンビニを襲ったところで、レジには現金はそんなに入っていないだろうから、犯罪に遭う可能性も減ったようだ。「深夜はワンオペ勤務」で対応するお店もあちこちで見かけた。
スマホ決済利用が急速に進んだ理由
そんな中、中国の発券銀行である中国人民銀行(PBOC)が「法定デジタル通貨(Central Bank Digital Currency=中央銀行発行デジタル通貨、とも)」の導入に向けた方針を打ち出す、との報道が舞い込んできた。
ビットコインをはじめとする「仮想通貨」は、中核となる取引データを管理する技術である「ブロックチェーン」に分散されて管理されるもの。したがって、ブロックチェーンは仮想通貨を利用するあらゆるユーザーのコンピューターに保存されるものだ。しかも仮想通貨は本来、規制当局や銀行といった特定の管理機関を持たないため、権限が1カ所に集中することはない、という特徴を持つ。
ところが中国人民銀行は、仮想通貨の本来の利点をいわば否定する格好で、自国の金融当局による管理下に「官製デジタル通貨」を収めようとしている。同行は、つねにマネーロンダリングの撲滅に向けた対策に力を注いでいるが、世界的に見て前代未聞ともいえるこの動きは、政府が、個人が運用するネット上でのお金の動きにも目を光らすことにもつながりそうだ。
ただ、中国の大多数の一般市民が「自分が扱うほとんどの金融資産」をデジタルデバイス上で動かしている昨今、「多少の不便があっても金融当局による管理があったほうが安心できる」と考える向きがあっても決して不思議ではない。スマホ決済サービスがここまで短期間に広まった最大の理由は、ほかならぬ「中国に流通するニセ札が多すぎた」からだ。
信用できない紙幣を持たされるより、確実に数字で読める電子決済のほうが、信頼性が高いと感じる市民の支持を得たと見るべきだろう。中国人民銀行の幹部もこれまでに、法定デジタル通貨について「当面は人民元現金を代用するものとなる」との見方を示している。
今後中国では「現金を知らない子どもたち」が出現するのかもしれない。デジタル取引が高度に進んだ社会ではそういう奇妙なことが起こるのだろうか? 今後の推移を見守ることにしたい。
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