怒濤の勢いで浸透、中国「スマホ決済」の実態 現金を使いたい短期滞在外国人にはとまどい
基本的にQRリーダーかスマホのアプリがあれば決済が完了するため、瞬く間に中国の一般市民の間に広まった。
「お客様はまず席にお座りください。席に座って簡単にオーダーができます」。ファストフード店に行くと、店員は顧客にこんな呼びかけをしている。顧客はわざわざ列に並ぶことなく注文ができるというわけだ。
スマホ決済普及の恩恵を受けているのは?
中国ではすでに、コンビニやスーパーでの買い物にはじまり、公共交通の乗車、果ては友達同士の金銭貸し借りの授受なども含め、すべてスマホを使ったやり取りが暮らしに浸透している。
中国でのスマホ決済の「ここ3~4年の伸び方は驚異的」と、日本企業の中国ビジネス展開・会社経営を20年にわたって支援し、上海や香港などに拠点を構える水野コンサルタンシーの水野真澄社長は話す。
スマホで何でも払える、買える、という時代がやってきたことで、「最も大きな恩恵を受けたのは、居住地の近くにこれまで店らしい店がなかった辺境地の人々。どこにいても公平に流行の最新アイテムを入手できるようになったのは革新的な出来事ではないか」と話す。「田舎の人々が抱えていたコンプレックスとかディスアドバンテージは一気に解消したわけです」。
日本ではソフトバンクがPayPayの普及に向けて大キャンペーンを実施、QRコードを使った決済サービスが身近なものになりそうだ。「スマホ決済に慣れたら、今まで現金をやり取りしていたことを忘れてしまったくらいだ」と水野氏は語るが、日本でもそういう人が増えるのだろうか。
しかし、中国に短期滞在する外国人がこのサービスを利用するには、2つの大きなハードルがあり、現実的にはとても困難な状況にある。ウィーチャットペイ、アリペイともに「携帯番号」と「国内銀行の口座番号」とひも付けることでサインインできる形に設定してあるからだ。口座を作るときに銀行で中国の携帯番号を聞かれるうえ、各種のアプリを使用する際、中国の携帯番号の入力が必須なのである。
「ならば、中国携帯のSIMカードを買えばいいじゃないか?」という声が聞こえてきそうだが、「セキュリティーの強化で3年ほど前に実名登録制が実施されたことで、特定の携帯電話プロバイダーの店舗でないと買えなくなった」(水野氏)。中国での短期滞在中に買う手間を考えると、購入へのハードルがずいぶんと高くなってしまったわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら