短くてゆるい運動が脳に及ぼす侮れない効果 たった10分ゆるやかに体を動かすだけで
研究グループは36人の学生を集め、まずはフィットネスバイクの上で10分間、じっと座ってもらった。そして別の日には、心拍が少し上がる程度にゆっくりしたペースでペダルを漕ぐよう指示を出した。
専門的に言うと、この時の運動強度はそれぞれの被験者の予備心拍数(最大心拍数と安静時心拍数の差)の約30%くらいだった。これに対し、速歩では心拍が最大心拍数の50%くらいまで上がるはずだ。
つまり、とても楽な運動だったということだ。おまけに時間はたったの10分と短かった。
体を動かした効果がハッキリと
どちらの場合も10分が経過したらすぐに、学生らはコンピューターを使った記憶テストを受けた。例えば1本の木の写真に続いてさまざまな別の画像を見た後、再び出てきた木の写真を見て、それが最初の木と同じかよく似た別の木かを、ボタンを押して答えるのだ。
非常によく似ているが違う写真も多く、なかなか難しいテストだ。最近の記憶を迅速かつ手際よくたぐって、見たことのある写真かどうか判断しなければならない。
次に研究グループは、学生たちに再び同じ手順で記憶力テストを受けさせた。ただし今度は回答する際の脳の様子をスキャンして調べるため、テストはMRIの中で行った。
体を動かしたことによる効果は(あれほど楽な運動なのに)記憶力テストの成績にはっきり表れた。フィットネスバイクを漕いだ後では記憶力が向上し、とくに写真同士が非常に似ている場合、改善効果は顕著だった。
言い換えれば、必死に記憶しなければならない難しい写真ほど、運動後のほうの成績がよかったのだ。