平成30年間を「節約の歴史」で振り返ってみた 主婦雑誌に携わり続けてきた著者が分析

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また、情報アンテナが高く、ITを使いこなせる者が節約勝ち組になった。例えば懸賞や商品モニターでのプチ稼ぎの場合、エントリー者が少ないほど確率が上がる原則がある。PCが一家に一台になってからはハガキよりもPCでHP経由のほうが当たりやすく、それがガラケーからの応募になり、ツイッターからの応募になり、スマホがデフォルトになってからはインスタへと移り変わっていく。それにいち早く気づいた者が達人と呼ばれるのだ。

そして、平成30年(2018年)の今、主婦雑誌に躍るのは、格安スマホ、新電気プラン、ふるさと納税でお米や牛肉ゲット、#ポイ活といったキーワードだ。主婦が子ども服を売買していたヤフオクはメルカリに代わり、カードの還元率やポイントサイト情報も節約主婦のたしなみのひとつになった。

情報収集の場は雑誌からSNSに代わり、平成当初のように自分の手を動かすのではなく、いかにお得情報をネットで効率よく集められるかという能力が、節約達人の条件になったのだ。

平成は「もの」への意識が変化した時代だった

内閣府は先ごろ、2012年12月を起点とする景気回復の長さが2017年9月時点で「いざなぎ景気」を超えたと正式に判定したとか。2012年と言えば平成24年、第2次安倍内閣がスタートした年だ。はっきり言って、「なんか、チョー景気いいよね!」という気はまったくしないし、節約志向は変わっていないと思う。

しかし、平成30年を駆け足で俯瞰(ふかん)してみて、いちばん変わったことは、ものへの意識だと再確認できた。ものを買うことが豊かだった時代は、買わないことは貧しさを意味し、節約はマイナスの行為だった。それが今では、ものの数を適正にコントロールできる人がスマートだと賛美される。同じ「買わない」でも、そこが違う。平成当初よく目にした「別のもので代用する」という言葉はとんと見当たらない。

髙かろうが安かろうが、不要なものは買わない。シェアやリユースやサブスクリプション(定額利用サービス)が当たり前に定着していき、今後はキャッシュレスツールも節約テクのひとつになっていくだろう。

節約を英語翻訳アプリにかけるとSavingとなった。しかし、これからはControlのほうがふさわしいかもしれない。Money Savingから、Money Controlへ。その転換を果たしたのが平成の30年間だったのではないだろうか。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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