警備員が足りない!「2019年度問題」とは何か

オリンピックのことを心配する前に…

東京オリンピックでは、セキュリティー対策においては限られた条件の中で、既存のシステムに調整を加えていく形が想定されている。その際、不安を残すのは危険人物の把握だと佐藤教授は指摘する。具体的には、日本に入国するすべての人をデータベースと照合し、把握する「顔認証システム」の活用である。

現在日本の主要空港では、日本人を対象に入国の際、パスポートの顔写真データとカメラ画像の照合によるリアルタイム判定が行われている(成田空港では、今年10月から出国の際の審査も始まっている)。今後は、この対象を外国人にも広げ、入管で入手した情報を個々のプライバシーを濫用しない範囲の中で、オリンピックの際の警備に生かしていくことが重要になるだろう。

グランドデザインがないと心もとない

ただし、顔認証システムの幅広い導入や活用に対しては、人権活動家から反発する声も出ている。「大規模なイベント運営で大切なことは、グランドデザイン。これがないまま技術的な問題解決のみを推し進めると、技術を悪用する人間が出てくる」と佐藤教授は話す。「人権派の方たちの懸念はもっともだが、顔認証システムがなかったときの不安のほうが大きいので、導入を見送ることはないだろう」。

導入や活用をめぐる世論の対立を招かないためにも、組織委員会が警備面において「ここまでやりたい」「できないことはこれだ」と線引きし、公にすることは必要不可欠だ。またその絵図を描いた人間が誰なのか、はっきりさせておく必要もある。主導するのは政府機関か民間企業か。政府機関であれば、データ収集の透明性と使用に関する説明責任が求められるし、民間企業であればプライバシーの遵守が求められる。

さらに、佐藤教授は「危険なのはむしろオリンピック後」と警告する。過去のオリンピックでも、開催国にやってきてそのまま行方不明になる外国人が一定数いた。警察は海外からの情工作員が身分や戸籍を乗っ取って日本人になりすます、いわゆる「背乗り」の心配をしているという。背乗り要員が日本で経済活動を行い、たとえば皇居周辺や自衛隊基地周辺の土地を購入する。そんな部分に警察は注意を払っているようだ。

オリンピックそのものの警備に向けた課題も少なくないが、その前後も気を抜くわけにはいかない。日本政府には長期的な視野に基づいて、警備やより幅広いセキュリティーについての対策を練ることが求められる。

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