男女で「セクハラ感覚」がズレまくる根本背景 中川淳一郞×治部れんげが徹底的に語る

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中川:ひざをついてお茶を出されるというので思い出したけど、大企業の受付はまだまだ美人の女性が担当しているでしょう? 福田淳一財務事務次官のセクハラ辞任じゃないけれど、女性の政治部記者もたいてい美人。あれって、何なんですか?

治部れんげ(じぶ れんげ)/一橋大学卒業後、日経BP社で経済誌記者となる。2006〜2007年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了。日経DUAL、Yahoo!ニュース個人、東洋経済オンラインなどにダイバーシティ経営、女性のエンパワーメントについて執筆。現在、東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。そのほかの著書に『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』などがある(撮影:梅谷秀司)

治部:企業の受付嬢も政治部の女性記者も同じ理由。ビジネスを有利に運ぶために、女性のセックスアピールを使う構図ですよね。先日、逮捕・解任されてしまいましたが、2000年ごろ、日産のカルロス・ゴーン会長にテレビ局が車の話題に明るくなさそうな若手女性記者を貼り付けていると、経済誌記者の間で話題になったんですね。新聞や雑誌の男性記者は夜回りしたり、テクノロジーの勉強をしたりして汗をかく一方で、別の戦い方をする女性記者もいる。

今となっては「女性性を武器にして記者を貼り付ける会社の人材マネジメントの問題」と思いますが、当時の経済誌記者の間では「女性性を売りにする記者はずるい」という感覚でしたね。

中川:テレビのコメンテーターを務めるようなエース級の政治記者は、男性だとそれほど評価されない。それなのに女性だと目立ったり、妙に評価されたりするでしょう。あれはなぜ?

治部:女性の層がまだまだ薄いからでしょう。男性は人数が多いから見た目で区別がつかないですけど、絶対数が少ない女性はどうしても見た目で注目されやすい。逆に保育士さんみたいな男性の人数が少ないセクターにいくと、「イケメン先生」などと言われやすい。男女関係なく絶対数が少ないと、目に付くところばかり見られてしまうのかもしれないですね。

よからぬことが起きやすい構図というものがある

――2018年は福田淳一財務事務次官の辞任や♯MeToo運動など、セクハラ問題の多い年でした。中川さんは女性と仕事をするにあたって、気をつけていることはありますか?

中川:仕事の発注受注は、同性同士だと問題にはなりません。でも男が発注側で女性が仕事を受ける側だと、おかしなことが起こると思っていて。俺が発注側でお願いしている仕事の受け手は、全員男なんですよ。

治部:そうなんだ。変に疑われたくないから?

中川:そうそう。でも例外的に一橋大の女子ラクロス部全員だけは、ここ12年ずっと仕事をお願いしています。新人採用にあたっては年に1回だけ面接して、卒業する時に焼肉を奢る。たとえ会ったとしても、その程度の関係にしておけば変なことにはならないなと。

治部:なるほどね。中川くんは発言はふざけているけれど(笑)、優秀な経営者でもある。「中川淳一郎セクハラ疑惑」が持ち上がったら、インターネットはきっと面白く書くでしょうし、本人も失うものが大きい。

私自身は「不倫は個人の判断でご自由にどうぞ」と思うけれど、権力構図の中で片方がノーと言えない状況はやっぱりダメだと。私が中川くんと話が合うのは、彼がそのあたりの権力関係や人権のことをよくわかっているからだと思います。

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