事業ごとの業績を示す「セグメント情報」(短信の12ページ)も見ていきます。各事業の「売上高」は、百貨店業が1235億円、卸・小売業が68億円、その他事業が94億円と、ほとんどが百貨店業によるものとなっています。ところが「セグメント利益」は、百貨店業は1億円ほど、卸・小売業は4000万円、その他事業は2億円ほどと、百貨店業の利益は非常に小さいものだということがわかります。
ここで、収益性の高さを示す「売上高営業利益率(営業利益÷売上高)」を計算してみましょう。初めに分析したJフロントは、3%。近鉄百貨店は、0.3%。約10倍も差がありますね。ちなみに、前回分析した大手IT業のヤフーは51.4%(2013年4~9月期)もあります。事業という点からも、百貨店は利益率が非常に低いわけですが、近鉄百貨店はその中でもより低いということです。
以上のことを考えますと、近鉄百貨店は資産効果の好影響は受けていたものの、業績全体が改善するまでには至っていません。また、先行オープンしたあべのハルカス近鉄本店タワー館の売り上げは好調ですが、それでも全体を押し上げるほどではない、と言えます。
ただ、同店は2014年の3月7日にグランドオープンを控えていますから、それ以降、どれだけ業績が伸びるのかに注目です。その一方で、同年4月には消費税増税が行われますから、そちらの影響にも注意しなければなりません。
大手百貨店は好業績だが、追い風はいつまでも続かない
最後に、百貨店全体の動きを見てみましょう。「全国百貨店売上高」を見ますと、今年3月から伸びてきていることがわかります(次ページ参照)。
夏場は猛暑の影響で、夏物衣料などの売り上げが増えたこともありますが、それと同時に、3月以降、高額品の売り上げが伸び続けています。こうした理由から、百貨店全体としては好調を維持しているのです。
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