大阪百貨店決戦! 増床・新店に沸くキタ、供給過剰の懸念もたげる
「梅田は日本一、いや世界一の百貨店激戦区になる」
JR大阪三越伊勢丹の開業を5月に控えた松井達政ジェイアール西日本伊勢丹社長は、こう言うと、表情をきっと引き締めた。
大阪・梅田駅周辺、通称キタ。まもなくここは、百貨店の売り場面積で新宿と肩を並べる一大集積地になる。これまで、キタ3店(阪急百貨店うめだ本店、阪神百貨店梅田本店、大丸大阪・梅田店)の合計面積は16万平方メートル規模と、近鉄百貨店阿倍野本店や高島屋大阪店など大規模店がひしめくミナミ(心斎橋以南)以下だった。ところが、今月以降、せきを切ったような増床・開業ラッシュに突入する。「2005年前後の景況感のよかった時代に作られた成長投資計画が、時を超えて実現しようとしている」(野村証券金融経済研究所の正田雅史主席研究員)。
トップバッターは4月19日の大丸梅田。従来比1・6倍、6・4万平方メートルへの増床が完了する。次いで5月4日には、三越伊勢丹が5万平方メートルで参入、この時点でキタは、20万平方メートル台へ載せ、新宿(25万平方メートル)へ肉薄する。さらに来年、増床中のうめだ阪急が8・4万平方メートルで開業すると、新宿を一気に抜き去る。
ミナミでも、建て替え中の近鉄阿倍野が14年に10万平方メートルの巨大な姿を表す。キタとミナミ合わせた売り場面積は実に54万平方メートルと、新宿二つ分の規模になる。
梅田への来街者は、毎日120万人程度。JR西日本も、春のダイヤ改正で大阪へ直結する快速を増発するなど、広域からの集客を後押ししており、「集客力は増すだろう。近畿(全域)や中国地方(の顧客)も取れるビジネスが構築できるはずだ」。山本良一・大丸松坂屋百貨店社長は、こう期待を寄せる。今回の東日本大震災後に、大阪へ本拠地を移す外国企業が増えたことも追い風になるかもしれない。とはいえ、売上高前年割れが続く百貨店業界にあって、梅田の“膨張”はオーバーキャパシティの危うさをはらむ。