「個室」をあえて作らない家に住むという選択 住まいに導入が進む新「脱LDK」とは一体何か
誕生からすでに半世紀以上が経過した中でLDKは徐々に形を変えてきた。なかでも象徴的なのが「脱LDK」という動きだ。画一的な住まいや空間づくりに疑問を持った、野心的な建築家が手掛けたのが最初だとされている。
脱LDKには特に定義はないが、あえて特徴づけるなら、
・家族の数で部屋数を決めない
・各居室の役割を決めない
という感じに整理できそうだ。
脱LDKの設計思想で建てられた住宅は当初、間仕切りが極端に少ない建物、つまり一見するとがらんどうに見えてしまうような建物であることが多かった。なかには、浴室やトイレにまで間仕切りやドアがないケースもあったくらいだ。
当初、利便性は重視されていなかった
このような間取りは、生活感がなくオシャレに感じられたのだろう。しかし、特に断熱性能が低かった初期の物件ではエアコンが利きにくく、夏は暑く冬は寒いという、快適な住まいでとは言いがたい建物も多かった。
一方で、現在進行中の脱LDKのムーブメントは、LDKそのものに新たな役割を追加し多機能化を図るものだと言える。具体例をあげる前に、その背景を紹介しておく。収納面への配慮に欠けた建物もあった。つまり、当初の脱LDKは間仕切りを極端に少なくすることで、デザイン性、見た目の開放感などが優先され、居住者の暮らし利便性はあまり重視されていなかったようだ。
第1は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など断熱性能が高い住宅の普及が進みつつあることだ。これにより、間仕切りが少ない建物であっても、居室の温熱環境を高めることができ、暑い・寒いといった問題をある程度解決できるようになっている。
さらに、それを可能とする開口部、ガラスサッシの登場も見逃せない。建物の断熱損失の約60~70%は開口部に起因するとされる。近年は複層ガラス樹脂サッシなど、外壁並みの断熱性能を有する製品も登場していることから、室内の熱が損ないにくくなっているのだ。
このほか、構造躯体(建築構造を支える骨組み)の強度向上により、間仕切りがない大空間、大開口が実現しやすくなったこと、エアコンなどの家電や設備の性能が従来と比べ格段と向上したことなども大きな要素だ。
これらにより、進化型脱LDKの1つが、庭などの外部環境をLDKと一体化させる設計手法だ。LDKと庭のテラスを一体的に活用できるようにするもので、庭を第2のリビングとしてLDKの広がり、居心地が高まる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら