役員9人辞任で露呈した官民ファンドの矛盾

産業革新投資機構が離陸早々に「空中分解」

10月に米国で設立した第1号ファンドは本格的な活動を始める前に清算中で、9人の取締役は残務整理をした後に辞任する。残る役所出身の2人の取締役に加え、新たに取締役を人選しファンドの継続を目指すが「人だけ替えてよしとはいかない。正直難しい」(前出の担当者)。JICの先行きは見えない。

世耕氏が認めているとおり、非は経産省側にある。経産省がまず書面で役員の報酬案を提示し、JICはそれを前提に報酬委員会に諮り、取締役会で決議した。だが、経産省側が一転、白紙撤回を迫った。

すでにファンド組成など走り出していたJICはこれを拒否。嶋田氏が説得に当たったが決裂し、会談の場で田中社長が怒って席を立った。後日の感情的なやり取りは前述したとおりだ。

報道をきっかけに高額報酬に逆風

なぜ経産省は手のひら返しをしたのか。直接の理由は高額報酬への批判だ。

9月に糟谷敏秀官房長が提示した報酬基準は基本報酬が1550万円、短期業績連動報酬が最大4000万円、長期業績連動報酬が原則最大7000万円(社長について)というもの。これを単純に合計すると1億2550万円となる。

この報酬額に財務省が難色を示していたうえ、11月3日に「官民ファンド高額報酬案 年収1億円超も」と新聞で報じられたことで一気に逆風が強まった。

ここで誤解を解いておくと、1億円超えはあくまでも理論値。長期業績連動報酬は、投資の成果(利益)の一定程度をファンド運営者で分け合う仕組みだ。利益が出ていなければ発生しないし、毎年あるわけでもない。また、具体的にどれだけの利益に対し誰にいくら分配するのかもまだ決められていなかった。

報酬基準については、従来の官民ファンドに対する経産省の問題意識が背景にあったことは間違いない。旧機構は不振企業の救済が目立ち、成長投資では成果を上げていない。JICでは政府の関与を減らし、民間ファンドに近い成功報酬を用意することでプロフェッショナルな人材を集める狙いだった。

しかし、経産省内でも税金を使った投資業務に高額報酬を用意することへの異論は根強かった。根回し不足と言ってしまえばそのとおりだが、これまでの官の常識の壁は厚かった。

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